23.3.14

鉋との格闘の日々


国内のインターネット・オークションで落札した古いStanley #4 Plane 。
日本でよく使われている木製の鉋(カンナ)とは違い、こちらは主に押して削ぐタイプである。(時には引いて使うこともあるが)

送られて来た鉋の刃を研ぐことから始めた。例によって雲の上のfacebook friendであり、インターネット上のお師匠さんでもある人の懇切丁寧な刃の研ぎ方を倣って、でき得る限りシャープに研いだ。
そして次に鉋の底を平らにするために、#120と#240のサンドペーパーで磨いた。この鉋は中央が必要以上に凹んでいて、かなり長いこと磨かないと平らにならなかった。
私のお師匠さんは、底を一旦平らにした後、両サイドを5〜6ミリほど更に削って、板を削っている最中に両サイドのエッジで板を傷つけるのを回避するよう奨めていた。
また、前方の数ミリも若干削り、後方の縁もスムースにしておくようにとのことだったので、その通りに仕上げをした。40年以上も家具職人として非常に美しい仕事をして来た人の言うことだ、間違いはないに決まっている。

準備は整ったものの、これまでの人生で一度も鉋掛けをしたことなどない私は、見よう見まねで(しかもインターネットのビデオでだ)始めてみるしかなく、少し削っては平らになっているか調べ、また、板の側面と直角になっているかにも注意を払いつつ、削る深さを微妙に変えたりなどして、ようやく少しコツをつかんで来たところである。

納得いくまでやり続けないと気が済まない性格に生れついてしまったため、他のことには集中できず、ずっと、どうしたらうまく鉋を操れるようになるのだろうかと、この3日間考えっ放し… 幸いなことに、雲の上の友達/お師匠さんは数多くのとても役立つビデオを一般に公開してくれている為、夕食が済むと毎晩ビデオを見て勉強しているのだが、頭で覚えたことを、言うならば『感覚で覚える』までに身につけるのには、まだもう少し鍛錬が必要で、この程度ではまだ良しとできないなと、今日も練習を終える時にそう思った次第である。

日頃使わない腕の筋肉を使うため、腕がダルくてたまらない。
しかも、鉋を握っている右手の人差し指が微妙に鉋本体と当たる部分があって、そこが水ぶくれになりつつあり、少々腫れてもいる。

でも、鉋掛けは思った以上に楽しい。



11.3.14

新しい友達?

仕事に使わなかったら全く必要なかった Facebook のアカウントだが、それでも数少ない知り合いといまだにささやかながら繋がっているため、時には語学学校時代の友達やブログで知り合った友達(と言っても、皆はるかに年下だが)からemailではなくFacebookを介してメッセージが来たり、私は気が向けばこんなものを作ったよと、焼きたてのパンとかクッキー、ケーキやピザの写真、はたまた仕事の写真やらをアップしてみたりもして、年に数回はソーシャル・ネットワークというものを使っているかなという状態である。

その程度しか使っていない個人の Facebook に、先頃珍しくフレンド・リクエストが来ていた。
全く会った事のない、言うならば雲の上の存在の人からだった。
その、雲の上の存在の人からフレンド・リクエストがくることなど、全くもって予想外で、本当に本人からか?と、一瞬疑ってしまったほどである。

彼は木工の世界では抜きん出て有名な人なのだが、長くガラス関係の仕事をしていた私は木工の世界のことなど知る由もなく、ある日偶然 You Tube で彼の卓越した技術を見た時、私はまるで父を見ているかのような郷愁にかられ、それからというもの、彼の技術を何度も何度も繰り返し見ては、知識として頭に詰め込み始めたのである。
彼の仕事用の Facebook page では、作業風景に加え、彼の人となりも垣間見えたりし、写真に加えて気取らない人柄が滲み出ている文章を読むのもまた楽しみになっていた。そう、ただの一般フォロワーとして、優れた技術に感服し、楽しんでいたのである。
私としてはそれで充分だったのだが…  
なぜフレンドリクエストが来たのかいまだにわからない。

木工については超初心者の私が持っている道具といえば、リョービの格安テーブル・ソーと、中古の Excalibur スクロール・ソー、マキタの小型電動ドリルとリョービの卓上ボール盤(卓上穴あけ機)、それにボッシュのサンダー件マルチツールセット(?)くらいなもので、サンディングのほとんどはサンダーを使わず、サンドペーパーで腕がダルくなるまで磨き続けることの方が多い。カンナもノミも持っていないので、シャープ且つ吸い付くような滑らかな表面に仕上げることなどは到底期待できない。
木工を仕事としている人の中には、板をカットする段階でさほど厳密に正確である必要はないという人が多くいるが、そのような人々は、強力なサンディングマシンで図面通りになるまで削って形を整えるのだ。しかし、サンディングで吸い付くようなシャープな面を作るのは不可能に近いように思えて、私はどうにも納得できる仕上がりにならないことに苛立ち始め、どうにかならないものかと考えあぐねていた。

雲の上の人は、公開しているビデオの中で、仕上げをカンナで軽く削ってピッタリになるように、コンマ何ミリという誤差を残してノコギリで板をカットしていた。(またはシャープに研がれたノミで誤差を削ぎ落としていたりもしていた)
「そうだ、そうしなければならなかったんだ」と、テーブルソーで切っただけのざらついた断面をピッタリつなげようとして長い間苛立たしい思いをしていた私は悟った。

実家の近くに住んでいたら、迷わず父に聞きに行っただろうが、そうもいかない今は彼のビデオとウェブサイトに載せられている説明だけが頼りだ。

ビデオで作業を見ることのできる You Tube には電動工具を使いこなす人の方がはるかに多く、中にはジグまで数多く手作りし、そんな方法があったのかと目からウロコの木工技術を披露してくれる人も何人かいるのだが、かつてアンティーク修復工房でほぼ誤差のない仕事ができるよう訓練を受けた私には、どの方法も満足できるものではなかった。
日本の伝統工芸師、或は宮大工のようなとびきり繊細な仕事をする人のビデオもYou Tubeにアップされてはいるが、そのような人はただひたすら作業をしている姿のほんの一瞬しか映されることは無く、そこから技術を学ぶことは非常に難しい。

雲の上の人は惜しげも無く昔からの工法を一般大衆に教えている。しかも教え方がとても上手だ。年期の入っていない人々がどのようにしたら完璧に綺麗なものを作ることができるかを、これ以上無いと思えるほどに丁寧に教えてくれている。
穏やかな口調と、超有名人なのに何もひけらかすことの無い真摯な態度は、見ていてとても気持ちがいい。




「ありがとう」ではなく「すみません」

病院に面会に行き、エレベーターが自分の居る階に来るのを待っている時の光景... 到着したエレベーターから降りる人は、必ずお辞儀をしながら降りてくる。 乗り込む際、最後に入ってくる人もまた、お辞儀をしながら入ってくる。「すみません」と言いながらお辞儀をする人が圧倒的に多い。 また、...