7.5.22

人気シリーズ“年金の現実”老後の暮らしは都会?田舎?生活が大きく変わる【しらべてみたら】



日本は老人に優しくない国である。

老齢年金を受け取るための "掛け金もどき" を長い年月支払い続けさせられ(実際には、自分自身のための積立ではなく、老齢年金を受け取るために、強制的に搾取されるのが当然の義務となっている、言わば "税金" のようなものだ)、ようやく年金受給の資格が与えられる歳になっても、雀の涙ほどしか支給されず、持ち家がなければ雨露しのげるというだけの実に粗末な家に住んで、食べたい物も満足に食べられず、医療費は容赦無く徴収され、しかも、公共の交通機関も無料になる都市ばかりではないときている。

ここ NZ では、年金の掛け金というものは存在しない。
掛け金を支払うことなく、65 歳になれば国から老齢年金をもらうことができるのだ。(20 歳を過ぎてから 10 年以上、加えて、50 歳を過ぎてから 5 年以上 NZ に住んでいることが求められるが、NZ 国民だけではなく、私のように永住権保持者も該当する)

65 歳近くになると、NZ Superannuation (老齢年金)申請の手続きを早めにするようにという email が IRD (Inland Revenue Department)(内国歳入庁)から届く。65 歳を過ぎてから受理された場合、遡って年金が支給されるということはないためだそうだ。

email は IRD から来たが、年金の手続きは Work And Income という部署で行うとのことで、その手紙に従って、Work And Income のウェブサイトでまずは Client Number を取得することになるのだが、通常 1〜2 日内(IRD ナンバーを申請時に記入すれば数時間内)に email もしくは携帯電話にテキストメッセージが送られてきて、自分の登録番号を知らされることになっていた。
だが、私の場合、申請後 3 週間経っても何の音沙汰もなく、仕方なくクライエント サービスに電話をしてみたのだが、いつかけても待ち時間 40 分前後というアナウンスが流れるばかりで、(一度は 40 分以上待ってみたが全く繋がらず)苛立たしい思いを何度か味わい、これでは埒が明かないと、Ministry Of Social Development に「いったい何時になったら番号が送られてくるんでしょうか?」と、苦情/問合せをするに至った。
Ministry Of Social Development の担当者からは、直ぐに「もう一度リクエストしてみて」という返事が email で届き、再度リクエストを送信すると、何と、その翌日、すんなりWork And Income から私の番号が 送られて来た。
明らかに、Ministry... から Work And Income にどうなっているんだと問い合わせた結果だろうと推測できた。

クライエント番号が取得できれば、あとはオンラインで申請ができ、わざわざ Work And Income の事務所まで出向くことはなく、便利であるが、添付する書類の写真を撮って(或いはスキャナーで読み取って)アップロードしたりすることに慣れていない人にとっては、おそらく面倒な作業に違いない。

* 老齢年金の申請とともに、家賃、水道料金の支払い等が生活費を圧迫している、或いは、医療費が賄えない等、困窮している人には、更に補助金が追加されるとのことだった。

申請事項に漏れなく記入し、ほぼ全ての要求された添付書類を送り終え、後は結果を待つのみ...  と思っていたら、5 日ほどして、添付ドキュメントが足りないと電話が来た。
不足しているドキュメントをオンラインでアップロードしろと言うので、早々にドキュメントを揃え、アップロード場所を探したが、どこにも見当たらない。
私の申請書は既に全てのドキュメントが揃っているとのことで、追加はできず、質問がある場合は、クライエント サービスに電話するようにと、ウェブサイトには書いてあった。

あぁ、また同じ電話番号か...

仕方がないので、最も近いクライエント サービス センターのオフィスを検索し、そこに郵便でドキュメントを送付することにした。

私の場合は、日本の年金を受給しているため、NZ の年金額から日本の年金額を差し引いた金額が支給されることになるが、NZ の年金支給額の方が遥かに多いため、収入が増えることは間違いない。

申請が受理されると、SuperGold Card が送られてくることになっていて、そのカードを提示すると、(オークランドについて言えば)公共の乗り物(バス、電車、フェリー)は平日の午前 9 時前を除いて無料になり、他にも様々な割引を受けられるようになっているようだ。

* AT (Auckland Transport) からもご丁寧に email が届き、Gold AT Hop Card を受け取れる歳になったことを祝うメッセージが書かれていた。

この国では、老齢=現役引退を祝ってくれるのだ。

日本はというと、長年(年金積立金だと唆され)徴収されて来たお金は、あくまで "国のもの" であって、個人のものではないという考えだ。だから、受給資格を取得する前に死亡したら、取られ損となる。そのことについて遥か昔に、恐喝紛いの督促状やら電話を何度もよこした税務署職員に異議を唱えたことがあるが、明確な答えは帰って来ず、年金制度は国民一人一人が支え合って成り立つもので、自分の利益だけを考えてはいけないと、そんな "聖人" 論を披露されただけだった。
保険料の取り立ては『脅迫まがい』のものであることがままあると、他の日本人からも聞いたことがある。支払わなければ家財の差し押さえもあると脅され、仕事を失い生活に困窮していた兄弟は、肩身の狭い思いをして、親に支払ってもらっていたとのこと...


NZ では、生活に必要最低限の年金+(必要であれば)補助金が当たり前のこととして支給される。
決して贅沢はできないが、暮らしてはいけるようにしてくれるのだ。

あぁ、せめてもう少し食料品やら光熱費が安かったらよかったのに...
売り出されている家の値段も、賃貸物件の家賃も、信じ難いほど高いのがどうにかならないものか...
気候も温暖で、コロナ対策も他の国々よりも遥かにマシだったこの国の欠点は、生活費が高いという点に尽きるだろう。

NZ 国民のほとんどが、近年の生活費の高騰に腹立たしい思いをしているのが、報道等でよくわかるが、それでも、Work And Income に申請し、援助が必要と判断されれば、補助を受けられるようになっているのは救いだ。(食費が足りなければ、スーパーマーケット等で使えるペイメント カードを発行してくれるというのは、今回、年金のことを調べて初めて知った)
もちろん、必要ならば医療費の補助も受けられ、住宅についても、信じられないほど安い金額で住める公営住宅など(国が定める規定に合致していれば)提供してもらえることになる。 



何年か前、T の友達が遊びに来た時、YouTube で観た貧困に喘ぐ年金生活者の話題が上った。
彼もまた、日本の年金制度の無慈悲さに怒りを露わにしていたのを、今でもよく覚えている。

今年は更に支給額が減額されるという報道があったが(2 年連続の減額)、この下のビデオに出てくる、一つのハンバーグを 2 回に分けて食べなければならないほど食費を切り詰めなければならない老人にとって、これほど酷い仕打ちがあろうかと、心が痛くなった。

*ちなみに、NZ の老齢年金は、今年 4 月から、僅かながら増額となった。

今の若者達から、「自分たちが老齢に達した時、年金をもらえない状況になっているかもしれないのだから、今の年金受給者達は、もらえるだけ幸せだ」と言う声が聞かれるのは珍しくないことだ。
だが、老人のこんな現実を目の当たりにしても、それでも幸せだと言い放てるのか...?
現在貧困に喘ぐ老人達もまた、かつては、老後の為と、少ない給料にもかかわらず、その中から年金保険料を差し引かれてきた人達なのだ。文句も言わず、素直に払い続けてきた人がほとんどだろう。




若者達は年金を受け取れなくなる恐れが少なからず予想されるのに、それでも積立金のように考え、"保険料" を払い続けることを強要されている。

日本の年金制度のあり方については、以前から見直すべきではないかと感じていたが、この国に来て更に強く違和感を覚えるようになった。


ここ NZ に来て 19 年が過ぎた。
この国を選んで本当に良かったなと、歳を取った今、改めて思う。



「ありがとう」ではなく「すみません」

病院に面会に行き、エレベーターが自分の居る階に来るのを待っている時の光景... 到着したエレベーターから降りる人は、必ずお辞儀をしながら降りてくる。 乗り込む際、最後に入ってくる人もまた、お辞儀をしながら入ってくる。「すみません」と言いながらお辞儀をする人が圧倒的に多い。 また、...