20.3.18

中野の鍛冶屋

長男の家のある東京で、ぜひとも行ってみたい鍛冶屋があった。
しかし、詳しく調べてみると、会ってみたかった鍛冶職人は数年前に亡くなられたとのことで、その鍛冶屋は既に廃業となってしまっていた。
ショックを受け、胸が詰まった。
日本の刃物の質の良さに誇りを持ち続け、そして更に高品質なものを作るべく努力を惜しまなかった『誠実』を絵に描いたような職人が、また一人この世から消えてしまったのだ。

方丈記が頭の中を駆け巡った。

代々受け継がれて来た職人魂がそこで途切れてしまったのだ。
最高品質を誇る日本の刃物にとどまらず、多くの業界で腕を誇る職人が作業できないほどの高齢になり、逝去してしまうと、後継者が存在しない事業は廃業となり、そして、時代が変わる度に『質』が低下して行くのを免れられないという現実...

東京都中野区に存在していた素晴らしい職人が残した世界に誇れる技術を、いつか、どこかで引き継ぐ人が出て来て欲しいと心から願わずにはいられない。
彼はその為に、生涯をかけて自らが研究開発したデータを、惜しげも無く公開していたのだから。



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