昨年、(日本の)夏も終わりに近づいた頃、日本にいる長男から、虫除け線香ホルダーを作って欲しいと連絡が来た。
コロナ下で楽しめる屋外アクティビティの一つである "キャンプ" にたびたび出掛けるようになり、様々なキャンプ用品を揃えたのだが、森林香を焚くための線香ホルダーは、なかなかいいものがみつからない...
希望のデザインでこういうのを作ってもらえたら嬉しいと言うので、どんな物か検索し、売られている商品のリビューを読み、欠点である『火が消えやすい』『底が熱くなる』という点をどのように解決し、更に安全面で問題の無い物にするには、どんな点に注意しなければならないのかをしばらく考えていた。
まず、見た事もない『森林香』のサイズを調べ、どれ位の余裕を持たせて縦横及び高さを決めようかと悩む ...
次に、火が消えないようにするための手っ取り早い方法は、アマゾンのリビューにあった『百均のミニ焼き網を蚊取り線香の下に敷く』のが一番だろうと思い、その焼き網のサイズを調べたが、残念ながら厚みまでは記載が無く、仕方がないので、約 5mm 程度と仮定して、製図した高さを修正...
底に敷く防火用マットは、当初シリコンにしようかと思い探していたのだが、中国の通販サイトでファイバーグラス製のマットを見つけ、取り敢えずどんな物か見てみるために注文した。
届いたマットの縫い目をほどき、ほつれた部分の布にライターの火を当ててみたが、全く燃えず、問題無く使えるだろうことを確認した上で、サイズに合わせて切った。恐ろしくほつれ易い生地であったため、遥か昔に洋裁用に買ってあったほつれ止めを塗ってから、型紙通りに切る方法を取った。全くほつれもせず、厚みも変わらず、ベタつきもせず、またカチンコチンに固まる事もなく、大満足。
マットの上に直接蚊取り線香を置くわけではないが、万が一のことを考えての予防策だ。
マットの厚みは 0.4mm ちょっとしかないのだが、マットを挟み込んで底板に貼り付けると底板と側面の板に隙間ができてしまうため、側面の板側に板厚の半分まで 0.4mm ちょっとの段差を付けた。(電動ルーター使用)
マグネット同士を付き合わせると強過ぎて、蓋の開け閉めが大変になるためだ。
仕上げは OSMO のオイルを極薄く 2 回塗ってよしとしたのだが、透かし彫り断面は布を使ってオイルを薄く塗ることができず、仕方なく竹串を使って(けっこう)たっぷり塗布した後、余分なオイルを出来る限り拭き取っておいた。
スチール ロッドは、壊れたワイン フリッジの棚だったもの...
ハックソーで切って使った。(廃物利用)
(写真で見て初めて、バイスが埃まみれだったことに気づいた。作業中は一生懸命なため、ただ切ることだけに集中していて、埃など目にも入らなかった)
切り口はシャープで、尖った箇所があると手を傷つける可能性があるため、ファイルで削り、滑らかな表面にしておく。
長男に百均で買っておいてもらう『ミニ焼き網』は、丸と四角のセットしかないようなので、丸でデザインしておいた 4 個の内 2 個は四角のデザインに変更... 丸でデザインしたものは四角の枠にはめるとしっくり来ず、結局全く違うデザインになった。
電動ルーターでは四角の『角』を作れないため、丸くなった部分はノミを使って修正しなければならないが、全てを電動工具を使わないで作るとなると、やはり時間は多くかかり、さすがに疲れて来た私は、早く終わらせたいという思いの方が強くなってきていて、手を抜けるところは抜くようにした。
透かし彫りした板の側も、埋め込むための段差を作る。
電動ルーター使用時は、板目に沿って削る場合ばかりではなく、板目に逆らって削らざるを得ない場合がある。残念ながら、私の持っている安いルーター及びルーター ビットでは、逆目部分のがさつきを免れられず、また、手作業では可能な "若干の誤差" を修正するのは容易なことではないため、超正確な仕事とは言えないが、この線香ホルダーのように、美術品ではない実用品に、そんなに神経を尖らせる必要はないだろうと自分に言い聞かせて、『こんなものかな』という程度の作業ばかりしていた。
まぁ、我が家の中で唯一見る目が厳しい H のパートナー(タイル職人の R)以外は、そんなに細かく出来をチェックする人はいないため、こんなもので十分だろうが... 心に引っ掛かる仕事しかできない不甲斐無い自分の力量にガッカリしながらも、早く仕事を終えたい一心で毎日作業を続けていた、老齢年金受給を目前にした初老の私...
四角のホルダーは、最初の構想では蓋を本体に接着してしまい、側面を半分に切断する予定だったが、途中で面倒になり、こちらも丸型と同様、蓋側にマグネット、本体側にスチール ロッドを埋め込んでよしとした。
埋め込む際に使ったのはエポキシ グルー。
5 分で接着部分が固まって修正が効かなくなるこのグルー... ゆっくり作業していると接着面に塗布しておいたグルーが固まり始めてしまい、マグネットやらロッドがきちんと収まらないうちにくっついてしまうため、一箇所ずつスピーディーに接着剤を付け埋め込んでいかなければならなかった。
接着剤で固定する作業は、いつでも神経を使う。
四角のホルダーの底には、ミニ焼き網が側面にくっつかないよう、枠を貼り付けておいた。
ミニ焼き網が側面から離れていれば、その上に乗せた線香が側面の板に接触することはないだろうと考えてのことなのだが、どうだろう?
エポキシ グルーが完全に乾いた後、はみ出たグルーをサンドペーパーで綺麗に削り取り、OSMO のオイルで 2 回のコートを塗り終えると、「あぁやっと終わった」と、出来はさて置き安堵した。
材料を揃えるのに時間がかかり、取り組み始めてから何ヶ月もかかってようやく完成した森林香ホルダー...
犬と桜は長男の希望に沿ってデザインしたもの。
その他は、かつて長男が送ってくれたハワイアンキルトのパターンブックに載っていたデザインだ。
それぞれの箱には、長男のイニシャルで合印を付けておいた。
腕が未熟なため、パーツ毎に若干の狂いがあるのを修正しきれなかった箇所があり、蓋と本体が最も座りの良い位置を記しておいた方がよさそうだと考えての、苦肉の策だ。
丸型のホルダーの底に置いて、ミニ焼き網が内部側面に触れないようにするためのリングも、おまけで作っておいた。細いリングなので、極力歪みが出ないよう、合板を使用。
ミニ焼き網のサイズがピッタリ表示通りでなかった場合のことを考えて、数mm 余裕を持たせて(大きめに)作ったが、少々心配である。
出来は...
総合評価 60 点というところかな...