ここ NZ では、 約 8ヶ月間ほぼ毎日続いていた午後 1時の政府の記者会見、若しくは メディア向け報告が、今月から(緊急の場合を除いて)基本週 4回 となった。(health.govt.nz, COVID-19: Current cases も同様に、月、水、金、日曜日のみの更新となっている)
感染者のほとんどは海外からの帰国者やら、スポーツ関連の入国者、海外から入港した漁船の乗組員やらで、全て managed isolation facirity 内に留まっていて、市中感染はこのところ報告されてはいない。
世界中で感染拡大が加速している中、NZ 住人のほとんどは、幸いにも感染の恐怖にひどく怯えることなく過ごせているわけだが、それでもやはり、風邪の症状が出れば取り敢えず PCR 検査を受け、万が一感染者が出た場合に感染者の行動を逐一トレースできるよう、NZ COVID Tracer アプリで訪れた場所と時間をレコードするよう強く勧められている。
また、公共の乗り物を利用する際には、マスク等の着用を義務付けられてもいる。
H は少し前に鼻水が出始め、頭痛もひどかったらしく、しばらく仕事を休んでいた時期があった。本人はコロナではないと思うと、自宅療養をしていたのだが、私は念のために PCR 検査を受けた方がいいかどうか GP(家庭医)に相談してみるよう促し、素直に助言に従った H は、すぐさま家庭医に連絡し、車から降りることなく、病院の駐車場で検査を受け、2 日後に「陰性だったよ」と連絡をくれた。
*何らかの症状がある、又は感染者と接触した可能性がある場合の PCR 検査は無料である。
もし陰性でなかったら...、
同居しているパートナーとその仕事関係の接触者はもとより、私たちも、H の会社の同僚も、H が数日前に行った眼科のスタッフも濃厚接触者ということになり、14日間の自主隔離+数回の検査を余儀なくされ、関係した全ての人が立ち寄った先を細かく洗い出すことになったのだ。
感染者本人だけではなく、接触者全ての行動をトレースし、感染者を洗い出す...
そのように徹底した "駆除作戦" が行えるのは、NZ の感染者が少ないからに他ならない。
一地域で一日に何百人も感染者が出ていたら、NZ のように政府の専門機関が逐一トレースするのはほぼ不可能だろう。そして感染経路を追えなくなった人々から更に増え広がり、収拾がつかなくなるというわけだ。
NZ 政府は、まず最初の非常に厳しいロックダウンで感染経路を遮断した。スーパーマーケット、薬局などの生活必需品を扱う店以外は閉まり、街はほとんどゴーストタウン化していた。
また、結婚式や葬儀でクラスターが発生したため、それらに参列することもすぐに禁止された。
親族の悲報を受け、海外から緊急帰国した者にも 14日間の隔離が義務付けられ、息を引き取る前に会うことも、葬儀に参列することもできなかった人々が悲嘆に暮れたのは言うまでもないが、それでも感染蔓延を防ぐためには致し方ないことだと泣く泣く受け入れるしかなかったのだ。
多くの犠牲を代償にしなければ、この世界中が恐れ慄く伝染病を封じ込んでおくことはできなかったのだと、おそらく多くの NZ 在住者は理解していることだろう。
市中感染がほぼ無くなった後は、市中感染者が一人勃発した時点で、感染を速攻で封じ込める対策を取って来た NZ...
政府がロックダウンを発令したのも迅速だったし、ほとんどの国民がそれに従ったというのは素晴らしいことだ。そのおかげで、今現在、ほぼ通常の生活ができるようになっている。
そのような厳しい措置を経験した私たちに取っては、日本政府が GO TO キャンペーンなるもので経済を活性化しようとしているのを見聞きして、『一体何を考えているんだ?』と首を傾げてしまうのは当然だろう。
マスク着用も、消毒液も、100% 感染を防げるわけではなく、目からも手からも、そして菌が付着した髪や洋服や持ち物からだってうつる可能性はあるのだ。(病院のスタッフが全身を防護服で包み、完全防備で患者と接しているのを見れば、"マスクをしているから安全" だという思い込みがいかに浅はかな妄想かがよくわかるだろう。
数日前、東京では一日に 600人を超える新規感染者を出したと報道されていた。しかし、街中がゴーストタウン化する様子は更々無く、多くの人々が買い物やら何やらに出歩いている。医療従事者が逼迫した状況に悲鳴を上げ続けているのにも関わらずだ。
市中感染者が一人出るだけで大騒ぎとなる NZ が、いかに健全であるかがよくわかるなと、心底思った次第である。