6.6.14

料理屋と電子レンジ

ある寿司がメインの料理店の厨房を覗いてみる機会があった。

朝一番で残り物の酢飯(硬くなるという理由で冷蔵庫には入れず、室温に置いたままだったもの)を電子レンジで温め直し(火傷するほど高温になる)、硬くなった部分を捨てながら寿司を巻く。酢は飛んでしまっているが、酢を足すということはしなかった。
残り物の酢飯を温め直す作業は正午過ぎまで続き、午後になって当日炊いたご飯に合わせ酢を混ぜ、そのまま長いこと放置… 当然酢飯は硬くなっているが、シェフ曰く、硬くない酢飯は酢飯ではないと… 私には硬過ぎた。


私が生まれ育った県には大きな漁港が2つもある為、そこで不味い寿司にお目にかかることはまず無かった。

以前東京で働いていた伯母が実家に帰った際、駅ビルに入っていたチェーン店の寿司(近海握り)を食べ、「こんなに美味しいお寿司をこんな所(高級料亭ではなく駅ビルの中)で食べられるなんて! しかもこんな良心的な値段で!!」とえらく驚いていたのを今でも思い出す。
伯母は長く住んでいる東京或は千葉近郊では『超高級寿司屋』にしか行かない人で、安い寿司が美味しいわけは無いとその時まで信じていたのだが、伯母の実家(=私の生まれ故郷)の辺りでは、都会の超高級寿司屋に遥かに勝る素晴らしく美味しい寿司が、普通にスーパーマーケットのお惣菜売り場でも手に入るのである。

残念ながら、私はNZで寿司を食べて美味しいと思ったことは今日まで一度もない。
どんな料亭で出されるものも、取り立てて評価する気にもなれないものばかりで、刺身も(サーモンだけは美味しいのだが)マグロに至っては色でマグロかな?と想像がつくものの、味は無いに等しく、ただの水を含んだ赤っぽいスポンジのような感じで、恐ろしく不味い。

前述の寿司がメインの料理店のシェフは年期の入った日本人という風貌はしているが、実際に料理の工程を見ていると、電子レンジ無しでは営業できないだろうと思えるほど、ピーピー、ピーピー一日中電子レンジ音が厨房に鳴り響いていて、それだけで何だかゲンナリしてしまい、シェフがどんなに御託を並べても、ちっとも凄いなとは思わなかった。

前日作り置きしておいたものを翌日電子レンジで温め直して出すという方法でなければ数をさばくことはできず、収益に影響が出るというのは、まぁビジネス畑にいる人には当然のことなのだろうが、せめて、料理の蘊蓄を述べたいのであれば、電子レンジを多用するのだけは止めていただきたいと強く思った次第である。

そこの寿司は、私にとってはどれもお金を出して買うほどの味ではなく、更に、頂いた寿司の揚げ物(巻き寿司に天ぷら粉をつけて揚げたもの)は、表現するとしたら、『油の味しかしないのり巻き』で、周囲はカチコチに硬く、これまでの人生で食べた最も不味い寿司であった。

まぁ、あれを『寿司』と呼ぶのであればの話だが。


おっと、書き忘れてしまった。
自分を超一流の板前だと自負して止まないシェフの働く店のメニューには『インスタントラーメン』というのがあって、それが一番収益率が高いと笑っていた。

インスタントラーメンだよ… しかも、スーパーマーケットで買える一番安いのだ。



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