2.11.17

思い出せない

キッチンが非常に狭いため、レシピ本等を立てて置いておくスペースが無く、コピーした(或は手描きの)レシピをマグネットで冷蔵庫に貼付けて使っているのだが、幅の狭いドアには何枚も貼付けられない。また、重ねて貼付けていると、マグネットの威力が弱過ぎて、窓を開けた途端風で吹き飛んでしまうことがある。

そんなイライラを解消するため、強力マグネットで冷蔵庫に貼付けられる『薄いレシピケース』を作っているところだ。



ケース自体の重みを極力減らすべく、7mm 厚の合板(例によって端板)を使い、ダブテイル ジョイントで組み立て... ダブテイル ジョイントは薄い板を強度を保たせて組み立てる際に非常に便利で、釘などを使うこと無く頑丈に仕上げられるという利点があるものの、ジョイント部分が丸見えになるという欠点がある。まぁ、美しさなどどうでもいいレシピケースにはこれで充分だが...
(無垢でもう少し厚みのある板を使用し、高級な箱ものを作る場合は full blind dovetail joint(隠留形蟻組接ぎ)を施す方が綺麗に仕上がって良いのは言うまでもない)

作業をしている間、ずっと頭に浮かんでいたのは、中学校の技術の時間に作った状差し(レターラック)のこと。
家から鋸を持って行ったのは覚えているのだが(おそらく、学校にはクラス全員分の鋸が用意されていないため、家に鋸がある人は持って来るようにということだったのだろう)、鑿や鉋は持って行った覚えが無く、使った覚えも無い。
鋸で切っただけのものをどうやって組み立てたのかも、全く覚えていない。切り口はざらついたままだったのか???

クラス中で最も早く、綺麗にできたことを教師から簡単に褒められたことはよく覚えているが、どんなものが出来上がったのかは、おぼろげながらの記憶しか無く、家に持ち帰って父に見せた記憶も無い。
鋸は父から借りたものだったに違いないのだが...

今思うと、誰よりも早く綺麗に仕上がったのは、おそらく鋸の切れ味が格段に良かったからだろう。どう考えても、学校の備品である鋸がしっかりと手入れされていたとは到底思えないし、第一、教えていたのは "先生" であって、 "職人" ではないのだから、要目立ての鋸しかなくても無理はない。

家で鋸を使って遊んでいた記憶など無いので、もしかしたら、その授業が初めての木工だった可能性が高いが、もしその時教えてくれていたのが "職人" だったら... もしかしたら、私も雲の上のお師匠さんのように10代から木工に傾倒していたかも知れないなと、ふと思った。(その道に入っていたら、雲の上のお師匠さんとの出会いも無かっただろう)

そんなことをずっと考えながら、ハンド カット ダブテイルを日本の鋸と西洋の鑿を使って作っていた。

板を寸法通りに切り揃え、ダブテイル ジョイントが出来上がり、仮組み立てをすると、あまりに殺風景で貧弱に見えた。
余計な時間がかかるので一瞬悩んだが、接着する前にフロント パネルに透かし彫りを施すことに決めたため、今日出来上がるはずだったレシピ ケースは未だ作業中。


スクロール ソーで透かし彫りをしている時に、「切り終わった後、サンディングが面倒だな...」とどうしても考えてしまう。


見た目はもちろん良くなるが、本当にサンディングが嫌いで仕方がない。
しかも、細い刷毛でこの細かい隙間にステインで色をつけるのも時間がかかり、乾かした後にまた、飛び出した繊維でザラザラになった表面をサンディングしなければならず、その後更に重ね塗りすることを考えただけで、気が遠くなる。


最近は夕食の支度をする時間になってもまだ明るく、アトリエのドアを閉め、裏庭を華やかにしているリンゴの可憐な花をしばし眺めてから家に戻った。



0 件のコメント:

コメントを投稿

「ありがとう」ではなく「すみません」

病院に面会に行き、エレベーターが自分の居る階に来るのを待っている時の光景... 到着したエレベーターから降りる人は、必ずお辞儀をしながら降りてくる。 乗り込む際、最後に入ってくる人もまた、お辞儀をしながら入ってくる。「すみません」と言いながらお辞儀をする人が圧倒的に多い。 また、...