9.10.18

20周年

彼の人が居なくなってから20年が経った。

この20年で、当時高校3年生の超スレンダーだった長男はちょっとお腹の出たオヤジになり、中学2年生で陸上部の花形だった次男は、運動とはほど遠い生活を送っているもののいまだスレンダー... ではあるが、従姉妹から「歳とった〜」と言われる風貌になり、小学3年生の超シャイだった娘は非常に "腰の据わった" OLになった。
仕事はITコンサルタント、ビデオエディター、グラフィック デザイナーと、皆それぞれの道を歩んでいる。


20年目の記念日を祝うためにはるばる日本からやって来てくれた長男を歓迎するかのように、当日空は快晴で、近くの公園の桜が咲き誇っていた。


もちろん、日本の桜並木とは比べ物にならないほどこじんまりとした規模ではあるが、淡い桜の色は人々を惹きつけるようで、様々な国の人が花見に訪れ、写真を撮り、樹の下に寝そべったりなどして、桜の季節を満喫していた。


我が家は一気に『写真コンテスト』モードに突入し、各自がそれぞれの感性で構図を決め、切り取った写真を披露し合った。
感性は、三者三様ならぬ四者四様で、全く同じ木を撮ってもまるで違った雰囲気のものとなっていた。それを面白おかしく評価し合うのもまた楽しい。





長男はたった4日間の滞在だったが、オークランドに着いたその晩にイカ釣りに出かけ、不発だったため翌晩にもイカ釣りに再挑戦。3日目にはイカを諦め鯛釣りに行くという熱の入れようで、傍目には元気そのものにしか見えなかったが、「あまり調子が良くない」と...

次男はこれまで経験したことのない連夜の釣りに苦笑いし、「そろそろ帰ろうよ」と言っても、兄ちゃんが「え〜、もう少しやろうよ」と言って帰らせてくれなかったんだと笑っていた。

3日目の深夜、生まれて初めて鯛を釣り上げた長男の写真が携帯電話に送られて来た。
満面の笑顔の彼に釣られた鯛は、サイズが小さかったためリリースされたが、それでも、自然の中で弟と一緒に釣りを楽しむ事ができたのが何より嬉しかったようで、小さい頃もこうやって2人で川釣りに行ってたよねと、しばし昔話に花を咲かせていた。

20年... 色々な事があったねとしみじみ話しながらも、子供の時のようにはしゃぎながら、終始ケラケラ笑っている子供たちを見て、片親でも素直に明るく育ってくれたことを私は心から嬉しく、そしてまた、有り難くも思った。




楽しい時間はあっという間に流れてしまい、長男は今朝の便でオークランドを旅立った。
そして、つい今しがた、無事成田に到着したという知らせを受け、皆ほっとしたところである。

「子供たちは皆真っ直ぐに育ってくれたよ」「これからも、ずっとそこから子供たちを見守っていてよね」
彼の人の写真を見ながら、私は心の中で何度も懇願し、眠りについた。




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