母の体の状態を確かめるべく、数日前に電話をしてみた。
電話口の母は元気な様子で、蜂毒入りの蜂蜜を姉と2人で毎日欠かさず飲んでいるため、もう瓶の中にはほとんど残っていないと言うので、蜂毒の効果が少しでもあったのかと聞いてみると、これまでは夜中に 3 〜 4 回トイレに起きていたのが、最近は 2 回ほど起きるだけで済んでいるため、以前に比べるとよく眠れるようになったとのこと。効果が表れ始めているというのを聞いて、勧めた甲斐があったと嬉しくなった。
続けて飲んだ方がいいからと、直ぐに、いつも注文するオンライン ショップで、賞味期限が今年の12月というセール品と、賞味期限までまだ1年半ほど残っているものの両方をまとめて6瓶(+普通の料理に使うための蜂蜜 1kg)注文しておいた。
他に欲しいものがあれば一緒に送るからと、母と姉にそれぞれ聞いたが、今のところ欲しいものは無いとのこと... 二人とも、送料を含めてお金がかかるのを気にしてくれているのがよくわかる。そういう家族だ。
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1 週間早く新居の鍵を受け取った同居人 H とR は、早速に掃除に出かけて行き、約 5 時間後に家に戻った時にはヘトヘトを超えてボロボロ状態のようだった。
インターネット オークションでは、売ってお金になるものなのに手入れもせず、汚いまま引き渡すことを何とも思っていない売主が驚くほど多いが、H たちの借家も然りで、借主には綺麗に使えと強く要求するくせに、大家は汚れたまま貸し出すことに罪悪感のかけらすら無く、油でギトギトになったキッチンやらブラインドの汚れを拭き取って回るのに辟易したと、二人して憤りを露わにしていた。
この国では掃除専門業者が余る程いるのに、なぜそういう業者を頼んで綺麗にしておかないのだろうか? これから何もしなくても週に $580(日本円にして約 4 万円)もの収入が保証されているというのに、清掃業者に払う(おそらく)$100程度(or 以下)の経費をケチる... 若い二人にも大家の強欲さが垣間見えたようだった。
それに比べたら、私の借りている家の大家は遥かにマシだ。
修繕が必要な場合でも、私たちはできる限り自分たちで行うため、この 13 年で頼んだのはボイラーの不具合を直した 2 回と、キッチンのお湯が出なかった時の計 3 回だけだ。そのためか、家賃の値上げはたったの 1 回、週に $50 上がっただけで済んでいる。
市の中心部にほど近いこの界隈は高級住宅地として知られており、治安も良く、ここに住んでいるというだけで羨望の目で見られるような地域なので、借家が出たとしても、当然のことながら賃貸料は目が飛び出るほど高く、1 週間に日本円にして 10 万円ほどかかるのが相場という、常軌を逸した状況となっている。(こちらでは月極ではなく、1週間単位で家賃が設定されていることが多い)
借りているこの家を今貸しに出したら、おそらく 3 倍近い家賃を取れるに違いないのだが、インド人の大家さんは私たちが住み続けていることに不満はないようで、値上げをしてこない。私たちは本当に恵まれている。有難いことだと心から感謝せずにはいられない。
H は今住んでいる家があまりにも便利で快適なので、ここよりも不便で狭い家に、ここよりも多くの家賃を払って住まなければならないことに心底ガッカリしていたが、何件か借家を見て回った上で、そこが一番マシだったらしく、諦めるしかないと言っていた。
まぁ、その高い家賃を支払える能力があるだけまだマシかもしれないが、かわいそうなことである。
H は毎日少しづつ荷造りをし始めた。
日本から持ってきた『思い出の品々』は、生活に必要なものではなく、しかも滅多に見る事もないのに捨てられない。
いつか、もっともっと歳を重ねて、昔を懐かしく思うような歳になったら、しまいこんであった箱を取り出してきて、笑いながら過去を振り返るのだろうなと、結構な歳を重ねてしまった私は想像し、笑みが溢れた。
あと 1 週間もしないうちに、我が家は二人きりになる。
1998 年 10 月、5 人家族が突然 4 人になり、2004 年 10 月に 3 人になり、そして今年、2019 年10 月には 2 人になる...
我が家の成員が計画したわけではないのに、何故かいつも神無月に家族が旅立つことになる。
理由があるなら教えて欲しい...