姉は実に器用な人で、洋裁も編み物もプロ並みに上手い。
ほとんど毎日のように、時間を見つけては編み物をしていて、私が滞在中にも、幾つ作ったか数え切れないほどの作品が出来上がっていた。
母の誕生日にはカーディガンを編み、ソックスも、帽子も、ティッシュケースも、マフラーも全て母のために編んであげてあった。
姉が娘のために編んでいた薄手のセーターは、袖が透かし編みでデザイン的にも美しく、色も綺麗な青で、姪にとても似合っていた。
私も過去には少なからず編み物をしたことがあるが、ここ何年も編み針セットを見た記憶がないほど遠ざかっていて、専ら木工に勤しんでいただけだった。
ふと目に入ったテーブルの上のコースターを、気分転換に編んでみようかなと姉に言うと、編み方図をコピーしてくれ、かぎ針やら毛糸やらまで用意してくれて、そこから編み物教室の始まりとなった。
小学生の頃、姉に洋裁を教えてもらったことがあるが、それは厳しい人で、一度教えたことは二度と教えてくれなかった記憶が蘇ってきたが、歳をとって丸くなった姉は、私が戸惑っていると何度も丁寧に教えてくれるようになっていて、それが最も驚いたことだった。
コースターの次は小物入れ、そして、それらを編み終わると、今度はソックスを編んでみるように言われ、少々躊躇しながら、YouTube のビデオを観ながら編み始めたが、説明がよくわからないところは、隣で姉に教えてもらう必要があった。
編んでいる途中、母からの呼び出しブザーで中断すると、どこを編んでいたのかもうわからなくなる...
私が面倒な所を編んでいる間は、姉が気を利かせて率先して母の面倒をみてくれることが多かったが、コツが掴めないうちは何度も目を確認しなければならず、きちんと出来ているかどうか定かでないと編み直しもしたりして、完全に覚えるまで結構な時間がかかった。
集中して編み物をしていたおかげで、介護のストレスはだいぶ解消でき、編み物が前にもまして楽しく思えるようになってきた。
姉が私と編み物が好きな H のために、細かいパーツを買い揃えて作ってくれた段数リング、目数リング、増目リングは、実際使ってみると誠に便利で、もうこれら無しには編み物はできないだろう。
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