11.8.26

無料運賃

 65 歳以上の特権の一つに、市内でのパブリック トランスポートが無料になるというものがある。



ずっと以前 SuperGold(シニア向け) AT Hop カードを入手してからこれまでバスに乗る機会のなかった私だが、T が仕事に出ていた日に郵便局まで 2 kg の荷物を持って行く用事があり、これまで歩いて行っていた場所ではあるが、試しにこの無料バスカードを使用してみようと勇んで出かけた。

『心臓破りの坂』と言っても過言ではないほどの、家の前の坂道を必死で上っている時に、無情にも目の前を通過した緑色のバス(INN)...  家を出る時には緑のバスは到着まで 9 分あると書かれていたのだが、私はそんなに歩くのが遅かったのかと愕然としながら、まぁ次に来ることになっているオレンジのバス(OUT)に乗ればいいか...  と気を取り直して坂を上り切り、バス停に着くと、1 分後に緑のバスが到着するという表示が出ていた。AT Mobile アプリの情報はあまり当てにならないと考えた方がよさそうだ。

まぁ、ポストショップの近くまで行けるのならどちらでもいい。ただ降りるバス停が少しだけ離れているというだけのことで、歩かざるを得ない距離のほとんどはバスに乗っていられることに違いはないと心に余裕が持てるのは、単に "急ぎの用事" ではないからに他ならない。


バス停でバスを待っていても、手を挙げて乗る意思を運転手さんに示さないと、バスは止まってくれないというのは、今では当たり前のことのように思えるが、日本でもそうだっただろうか?
日本のバスはどうだったのか、もうまるで記憶が無くなっている。

手を挙げてバスが止まり、Hi! と運転手さんに声をかけ乗り込むと、すぐに無料バスカードを機械にかざす。車内を見渡すと、乗客は私を含めてたった 2 人、しかも明らかに無料運賃の特権を享受している老人 2 人。毎日そんなものなのか、たまたまそうだったのか...

たった 2 つの停留所を越えて下車する際にもバスカードを機械にかざし、運転手さんに Thank you! (または Thank you, driver! )と声をかけて下車するのはこちらの常識。学生であれ会社員であれ、老人であれ小さな子供であれ、ほとんどの "Kiwi" はそのようにして運転手さんに敬意を表すのだが、これが見ていて実に気持ちが良いもので、日本で個人経営の飲食店に食事に行き、代金をしっかり払った上で「ごちそうさま」と言って店を出る時と同じようなものかと、何だかそんなことを思ってしまった。


ポストショップの窓口は数箇所あるものの、その時は 二箇所しか開いておらず、一箇所は時間が掛かっていそうな客がさも疲れた感じで立っていて、塞がっている状態。
見渡す限りドロップ オフ ボックスも無いため、順番を待ち、オンラインで支払いを済ませてあることを伝えると、受け取りのレシートは必要かというので、一応念の為もらっておいた。

帰りはバスに乗らず、歩いて帰る道すがらセールをしている布地屋に寄ってみようかと、出かける前には思っていたのだが、歩いているうちに何だか面倒くさくなり、布地屋はスルー。
それでもロシアの食料品を販売する店には寄り(お腹が空いていたため)、ハニーケーキやらお菓子を少々購入して、途中、珍しく私よりも歩みの遅いお爺さんを追い越して、出発してから 1 時間 13分後、家にたどり着いた。


それだけでグッタリ疲れてしまった私は、帰ってから眠気に襲われ、ソファで何度もうたた寝をしたにも関わらず、夕食後は早々と寝てしまい、翌朝まで一度も起きることなく爆睡した。


こんなに疲弊してしまう原因は、単に日頃の運動不足だけではなく、家を出た瞬間に待ち受ける『心臓破りの坂』にあるのは間違いない。
日頃運動している H でさえ、最近会社から歩いてランチに来た折に「坂道キツイな」と思わずため息をついたほどすごいのである。

これ以上歳を取ったら自力で上るのは難しいだろうなと考えると、どこか平坦な地域に引っ越したくなってしまう。
だが、ここよりも安く、環境の良い所を見つけるのは至難の業という、悲しい状況なのである。




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