日本で快適だと思うものは、シャワートイレと百均、Amazon プライムの翌日配送と、言うまでもなく日本食だ。
その内で無いことにガッカリするのはシャワートイレであろう。
今では日本の何処でも備え付けられている感のあるシャワートイレは、この時代になっても日本以外ではほとんど見ることはないと聞いている。日本を訪れた観光客がこぞって絶賛しているにも関わらず、日本企業が積極的に海外に進出するでもなく時が過ぎているのが現状だ。
海外組が普通にシャワートイレを備え付けられる日は、果たして来るのだろうか?
さて、日本滞在中に免税ではなく普通に買い物をすることがほとんどだった私は、Amazon でよく買い物をした。
利便性を考えてプライムに入ったが、ほぼ全ての商品は翌日配送となり、非常に便利だった。時間指定をすれば間違いなく指定時間内に届けられ、時間を指定していなければ夜 7 時頃までには間違いなく配達された。日本の宅配業者の信頼度は非常に高く、荷物の取り扱いも、接客に関しても丁寧である。NZ のとんでもなく杜撰なクーリエに爪の垢を煎じて飲ませたいほどだ。
Amazon で購入した内の幾つかは母の為のもので、容量の大きな吸飲み、痩せこけた身体でも使える非接触型体温計、MCT オイル等々、必要に応じてその都度購入。
自分用に買った "締め付け過ぎることのない" 着圧ソックスのおかげで、10 時間に及ぶフライトでも足が浮腫まずに済んだのは期待以上だった。
また、恐らく小学校以来ではないかと思われるリュックサック購入は、姉や姪の強い勧めがあったからに他ならないのだが、7 kg 弱にもなってしまった機内持ち込み手荷物も楽々運ぶことができ、非常に快適であった。
日本滞在中、幾度となく行ったダイソーやセリアといった百均の店。
百円の物ばかりではないが、それでも安く、品質は昔のように悪くはない。しかも介護用品まで売られているのには驚いた。
介護が必要な人の状態は様々であるが、身体/お尻拭き、使い捨てビニール手袋のようなごく基本的な必需品から、本来は専門店やら限られた薬局でしか手に入らないような、口腔ケア スポンジなども販売していて、ただただ凄いなと感心した次第である。
キッチン用品から洋裁小物まで、今回は買ったものが結構あった。
日本食の秀逸さは世界中で有名だが、私の故郷である静岡県は新鮮な海産物に恵まれ、ダントツに寿司が美味しく、スーパーマーケットで売られているパック寿司でも十分だと思えるほどである。もちろん、アボカドが入った巻き寿司など無く、握りがほとんどであるのは言うまでも無い。
また、滞在中、寿司以外にも美味しい物をこれでもかと言うほどご馳走になった。
この先、生きている間に、毎日のようにこれほど贅沢な食事ができる日が来るとは思えないが、それでも NZ に早く戻りたいとひたすら思ったのは、ひとえに、日本が住みやすい国ではないからに他ならない。
田舎に行けば行くほど、陰湿になる人間関係...
他人の生活に土足でズカズカと入り込むことがさも当たり前のように、隣近所の家の事情を把握したい輩がやたらと多く、有る事無い事ふれて回るのを唯一の楽しみとしているような人々を見ると、ほとほと嫌気がさした。
父が他界した後、実家は耐震構造の家に建て替えをしたのだが、家が出来上がると、近所の人たちが家を見せてくれとゾロゾロとやって来て、展示場でも無いのに全ての部屋を見物して回ったのだそうだ。
もちろん姉は断りたかったが、断ったら少なからず険悪になるのは間違いなく、やむなく要求を呑んだと言っていた。プライバシーも何もあったものじゃない。
私はそのような生活は真っ平御免だ。
滞在中、防災訓練と称するものがあったが、学区毎に割り振られた防災班というものがあるおかげで、学区の境目にある私の実家は目の前にある小学校ではなく、1.3 km 彼方の小学校まで歩いて避難しなければならなくなるという、非現実的な、誠に馬鹿げた行動をとらざるを得なくなっている。
非常時に、母のような要介護の家族が居る家庭は、車椅子を押して避難場所には行かず行けず、歩いて 5 分の所にある総合病院にも避難できず、家で待機しているしかないだろうと、姉夫婦は言っていた。私はたまたま会った隣人にも同じ疑問をぶつけてみたのだが、「そういう決まりになっているから仕方がないんだよね。避難するより自宅に居た方が安全かも知れないね」というだけで、上から言われたことには従うしかないという頭しかないことがわかった。
緊急事態が起こる前に、何とか現実的に受け入れることのできる対策を取ろうという前向きな気持ちなど更々無い。いや、そういう気持ちを抱かせないように教育されて来ていると言うべきだろうと思えて仕方がない。
あの常にしっかりとしていた姉でさえも、つまらないいざこざに巻き込まれないように、あえて正論を言わず、だんまりを決めこんでいる姿を見ると、『言っても無駄』なんだろうなというのがよくわかった。
シャワートイレも無ければ、美味しいお煎餅も、スイーツも無いに等しい(あっても高過ぎる)NZ に戻り、入管で「あなたすごく若く見えるわね」と笑顔で迎えられ、やっと帰って来られたことを本当に幸せだと感じた。
日本を出て本当に良かったと、心底思えた今回の帰省であった。