北アフリカにも雪が降ることを知ったのは、アルジェリアに住む青年との会話の中でだった。
国土のほとんどがサハラ砂漠に覆われ、裕福層は地中海を望む海沿いに住み、日がなテニスコートやらで暇をつぶす。
職にありつくのも困難な階級の若者達は田舎住まいで、お金が無ければ結婚もできやしないと嘆き、大人数の家族と共に質素な家で過ごすことを余儀なくされている。
解決策は…
上に立つものが裕福層から出ているような状態では、よほどのことがない限り世の中変わりはしない。
自国で希望の光りが見えない人々は、より良い人生を送ろうと粗末な船に乗り、ある者は地中海で溺死し、ある者は海の上で捕えられ、またある者はようやくたどり着いた先で捕えられ、国に強制送還される。
事が望むものにならない可能性の方が遥かに高いとわかっていながら、そうせずにはいられない切羽詰まった感情を、もちろん政府の役人は理解できるはずがない。役人はほぼ間違いなく貧困層からは出ていないからだ。
ある時、雪の中で無邪気に遊ぶ、田舎のアルジェリアの若者達のビデオを見た。
彼らは本当に楽しそうだった。
あの純粋さや屈託の無い笑顔が、汚い野望に乗っ取られた心を持つ支配者たちの犠牲にならないようにと、私はただ祈ることしかできない。
お金も力も、何も無い部外者がいくら吠えたところで、世界は何一つ変わりはしない。
青年は、アルジェリアはとても美しい国だと言っていた。
いつかそこに行ってみたいと思った。
地中海を望む海沿いのリゾート地ではなく、静かな田舎の村に。