23.11.23

Makita Router Trimmer Kit

数ヶ月前のこと...
これまで使っていたリョービの古い電動ルーター/トリマーが動かなくなってしまったため、新しく買おうかどうかとしばらく悩んでいた。

手持ちの昔ながらの工具類でほとんどのことはできるのだが、何しろ時間がかかり、電動工具を使えば一瞬で出来上がる仕事を、何十分も、何時間もかけて行うことを考えると、もうそれだけで気が萎えてしまうようになってしまっていた私には、作業に向かう気持ちを奮い立たせるという意味でも、電動工具の購入は必要に思えて仕方がなかったのだ。

自宅で使う物を作るためだけだったら、どんなに時間がかかろうが、ハンド ツールのみで作るのを楽しく感じるのだが、販売するとなると話は別だ。
丁寧に時間をかけて作り、安価で売っていたら時給一桁になってしまう可能性の方が高く、かと言って、労働に相応する対価を提示したら、ほぼ売れないことはわかり切っている。
ほとんどの人は製作にかかる諸費用も、労働時間も考えることなく、工場で作られた安価な既製品の価格を基準に "価値" を判断するのである。

神経をすり減らして手動で透かし彫りをしても、CNC マシンで作られた物との違いを考える人など殆どおらず、ごくごく限られた一部の人(おそらく手作業経験者)のみが、「良い仕事をしているね」と声をかけてくれるだけで、その他数多の人々は、時給一桁でも『高い』と言うに相場は決まっている。大量生産品は仕入れ価格が破格値、こちらは市場価格での仕入れなのだから、原価の差は歴然。太刀打ちなどできようも無いのは当然だ。


9 月半ば、幸いにも、ある店で創業  25 周年セールが始まり、月末までの限定でこれまでの最安値を付けていたことがわかり、意を決して購入するに至ったのがこのマキタのルーター/トリマーキットだった。



流石に高額なだけあって、古いリョービのルーターとは比べ物にならないほど、全ての部品がスムーズに動く。
パワフルでブレが無いに等しいと感じるのは、スイッチを入れるのが怖いと感じるほど振動の激しかったリョービの古いルーターを、10 年以上、" 振り回される" 感に怯えながら使い続けて来たせいだろう。

マキタのルーターは怖くない。
使い始めて最初に思ったのはそれだった。


亡き父がかつて祖父に言われたように、馬鹿丁寧な仕事をしていたら生計は立てられないのは疑う余地がない。
これまで父や雲の上のお師匠さんに倣って、ほぼハンドツールのみで木工に取り組んできた私だが、これからは電動工具も取り入れ、効率良く作業を行うことに気持ちを切り替えざるを得ないと観念した。

雲の上のお師匠さんのように世界的に有名になっていれば、ハンドツールのみで丁寧に仕上げた物を、労働に見合った金額、あるいはそれ以上で販売することは容易だろうが、無名のクラフターにそれは当てはまらない。

物価は高騰し、家賃は信じられないほど値上がりした。
年金を含めた上で、生活できる程度の収入を確保しなければならないのだ。






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