昨年日本から持って来たツールの中には、鋸の目立てをするファイルと、Saw Set があった。
使い捨ての替刃式鋸など無かった昔は、鋸が鈍らになったら研ぎ直すのは当然のことで、研ぎ直せば何十年も使い続けられたのだ。
父の工具箱には、沢山のSaw File が一つにまとめられて入っていた。
使い込んで欠けてしまっているものから、袋に入った新品のものまで、サイズもいくつかあったが、柄は大雑把に板を切って付けただけというものがほとんどで、そんなところには力を入れない性格だったんだと、父の違った一面を見た気がした。
面白いことに、新品の袋の一面には英語で表記がされていた。
こんなに古いものであるのに(と言っても、購入した年代は定かではないが、父はもう何十年も本格的に木工をしていなかったので、少なく見積もっても30年以上前のものであることは間違いないだろう)、こんな頃から日本のこのような特殊な工具が輸出されていたのか?という疑問は然ることながら、もっと疑問に思ったのは、この『日本の鋸用』のファイルが海外で需要があったのか?ということ。
海外の鋸は刃の付け方が日本とは違うので、目立てをする時には三角形のファイルを使うのが一般的のようだ。三角形のファイルを使えば容易に削る角度を保つことができるのに、わざわざ技術を要する削り方を選ぶとは思えない。…ということは、当時、日本式の鋸がもう既に輸出されていたということなのか… それとも、他の用途で使用していたのだろうか...
Saw Set は、(父が亡くなる前の年に)私がこちらのインターネット オークションで落札したものと同じ物を父も使っていたようで、父の工具箱の中にこれを見つけた時には、「これ、私も持ってるよ」と、思わずつぶやいてしまったことを覚えている。
全く同じ物を持っているのに、鋸やら鑿やら何やらをほとんど持って来て、ソー セットだけ置いて来ても仕方がないよなと、帰りの荷物の中に入れて来た。
左の光沢が無くなっている方が父の使っていたもので、真新しく見える右のものは、型番も製造元も全く同じものだが、箱には英語の表記しか無い。おそらく日本で輸出用に作られたものなのだろう。ここNZで購入したが、紛れもない日本製だ。
日本の工具は、ハンド ツールから電動工具に至るまで、世界的に評価が高い。
しかし、中には製造を人件費の安い国に委ねている企業もあり、品質が年々落ちて行くのを免れられなくなってしまうのではないかと、私はやはり危惧してしまう。
この先も、日本は高品質なものを生産/提供する国だというプライドを持ち続けていて欲しいものだと、昔の工具類を手にして、増々強く願うようになってしまった。
日本に限らず、世界的に有名な工具メーカーが、自国で生産するのを止め海外に製造拠点を移したり、或は、海外の資本家にブランド名を譲渡したりして、品質は信じられないほどお粗末になってしまったという話をよく聞く。
ブランド名が同じだからといって、品質が同じだとは限らないというのは、正に、消費者を欺いているということに他ならない。
消費者は、しっかりと本物を見定める目を持たないと、『紛い物』と言っても差支えないほど、低品質な"ブランド物"をつかまされることになるということを、しっかりと頭に入れておくべきだろう。
-----------------------------------------------------------------
さて、修理の終わったエッグビーター(ハンド ドリル)。
同居人たちに、この新しいハンドルを製作している段階の写真を見せたところ、2つに割って取り付けるところの写真と、取り付けたばかりの色を塗っていないハンドルの写真を見て、二人ともクスッと笑った。あのまま色を塗らないでいたら、『笑える修理』として楽しめたかも知れないなと、ちょっと残念に思った。
シェラックが乾いた後、#0000 のスチールウールで磨き、ビーズワックスで仕上げると、上品な光沢の仕上がりになった。
0 件のコメント:
コメントを投稿