インターネット オークションで昔のハンド ツールを売る目的は、大きく分けて2つに別れる。
一つは商売でやっている人。古いツールを二束三文で仕入れたり、国内、或は海外のオークションで安く仕入れて、上乗せした金額でオークションに出して仕事にしている。
もう一つは、家族が使っていた物(または自分がかつて使っていた物)で、使わなくなったのでいくらでもいいから処分したいという人。
この3つのツールをまとめてオークションに出品した人は、後者の方のようだった。
今週始め、この3点で $15 (+ 送料 $9)で落札し、3日後には荷物が届くという、素晴らしくスムーズなトレードだったが、出品者がこのような古いツールに詳しくないからか、説明にはそれぞれのサイズが書いてあっただけで、メーカー名は3点とも書かれていなかった。
ずっと探していた小ぶりの鋸と、エッグ ビーターと呼ばれるハンド ドリルは、想像していたよりもコンディションがよく、鉋は少々痛々しい修理がしてあった。
次にハンドルの剥げた塗装を取り除き、サンドペーパーで綺麗にした後シェラックを塗っておいた。(写真は、小さなハンドルにシェラックを塗り終わったところ)
小ぶりの鋸の歯の先端が一部欠けているが、使用するのには問題無いと思うので、このまま錆を取って歯の目立てをし使うことにした。
ハンドルは欠けも無く、非常に良い状態だった。
西洋のこういったハンドルは、実用一辺倒ではなく、デザイナーのセンスがうかがえるものが多いように思う。
まずは、少しガタツキのあったハンドルを外して、ブレードの錆を落とそうとしたのだが、このマイナス ドライバーでは回せない木ねじを外す専用ドライバーがない…
アトリエにあった鉄板を切ってドライバーもどきを作ったのだが、ねじがかた過ぎて鉄板が曲がってしまったため、仕方なく、DIY ショップに行って、最も安くて幅広のマイナス ドライバーを買ってきた。
小さな四角のヤスリで、買って来たドライバーの中央を削り、この両側の溝にぴったり納まるドライバーを作って問題解決。
ハンドルを取り外すと、中は錆でジャリジャリしていた。
そして、真鍮のネジには緑青が付いていたので、ワイヤー ブラシで綺麗に取り除き、平らな面は目の細かいサンド ペーパーで磨いておいた。
鋸の歯の部分は下の写真のように若干湾曲していたので、ハンマーで叩いて直した。
錆を取って出てきたメーカー名は、SPEAR & JACKSON。
イギリス (Sheffield)の超有名なメーカーだった。
さて、最も傷んだ箇所の多かった鉋だが、ブレードに付いていたマークを見てすぐに、これが Henry Boker のものだとわかった。
3挺目、Henry Boker…
3挺とも形が若干違いはするものの、特別 Henry Boker のコレクターというわけではないので、こんなに幾つも要らないかも…と咄嗟に思ってしまったが、この割れ目の入ったハンドルの修理に3カ所穴を空け、ねじ釘で留めてあるのを見ながらボディの汚れを取っていたら、色々な思いが心をかすめた。
この鉋を使っていた人は、きっとこの鉋が好きだったんだろうな…
ここまでして使い続けていたんだから、きっと使い勝手の良い鉋だったに違いない。
ただ飾っておくのを楽しむコレクター(ツール オタク)が、お宝に傷がつかないように丁寧に丁寧に扱っていたものではなく、これは仕事をし続けていた鉋なんだ…
これを使っていた人はどんな人だったんだろう?
どんな物を作っていたんだろう?
外側は汚れをあらかた取り、シェラックでコートしたものの、私はこのねじ釘の穴を塞いで綺麗にすることはやめておいた。
この鉋は痛めつけられていたわけでも、粗末に扱われていたわけでもなく、愛着を持って使い続けられていたのだ。
素晴らしいじゃないか。
この鉋を作った人がこれを見たら、ハンドルが割れても捨てずに使い続けてくれていたことにきっと感謝することだろう。
使い捨てではないツールを作る人は、長く使ってもらえることを最も喜びとするはずだから。
今日の作業は、外側を綺麗にしてシェラックでコーティングするまでで終了。
鉋の刃を研ぎ、鋸の目立てをするのは次回…
できればエッグ ビーターにもう一つ木製のハンドルを作って付けたいとも思っている。
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