31.1.17

私、友達だったんだ...

オークションで売れた物を投函しにポスト ショップまで出掛けた。

数年前に近所のポストボックスがことごとく姿を消してしまい、ごく小さな荷物一つを送るのにも、車に乗って行かなければならないというのは、誠に不便である。
ちなみに、ここはダウンタウンにほど近い、セントラル オークランドである。草原に建つ一軒家ではない。

あいにく最寄りの商店街の道路は工事中で、ポスト ショップの周りには車を停められず、少し先の市営の無料駐車場に車を置きに行かなければならなかった。

荷物を投函し終え、大きな交差点で信号が変わるのを待っていると、けたたましいサイレンの音が聞こえ、パトカーが3台繋がって、ものすごいスピードで走り抜けて行った。そしてすぐにまた2台のパトカーが目の前を通過し、一息ついた後、信号が青になったので渡り始めると、またサイレンの音が聞こえて来たため、道を渡っていた私と数人は慌てて走り抜けなければならなかった。

一体、何台のパトカーが通過して行ったのだろうか… よほど大きな事件/事故に違いないと、道行く人々がパトカーの向った方向を眺めていたが、見渡せる限りの範囲では何事も起こっておらず、平和そのものに見えた。

その後、中国系の八百屋に寄って野菜を少々買い、帰り道にある公園で苺と寿司を買って帰ることにした。

その公園に寄るのは久しぶりだった。

苺売りのMr. ダンディーは、私の顔を見るなり、「君の車がここを通るのを時々見てたのに、ずっと顔を見せに来てくれなかったから、何かあったのかと心配して、モト(お寿司屋さん)に何か聞いているかと聞きに行ったんだよ」と話し掛けてきた。

「腰を痛めていたりしてたもんだから…」と笑って答えた。

いや、本当は、知り合いの誰とも会う気にならなかったからなのだが、神経を病んでいるとは言い辛く、腰が痛いということだけ言っていいとした。

ちゃちゃっと果物を買って帰ろうと思っていたのだが、Mr.ダンディーは後から来るお客さんの接客を先にし、他のお客さんが「この人の方が先でしょ?」とせっかく言ってくれたのに、「彼女は僕の友達だからいいんだよ」と、私の買い物を後回しにした。

彼は、She is my friend, more than a customer. と他の常連客らしい人たちに言っていたが、私はずっと、自分を単なる客だと思っていたので、心の中で「えっ?そうなの?」とつぶやいてしまった。

電話番号をやり取りすることも無く、相手の家が何処にあるのかも知らず、プライベートで会うことも全く無く、年に数回苺を買いに行く時に話をするだけの人を友達と呼ぶのなら、私以外の客は皆 "親友"と呼べそうだなどと、くだらないことを頭の中で考えながら、客が引けるのを待っていた。

積もる話(?)を終え、お寿司屋さんに寄ると、開口一番、「苺屋さんが、○○さん(私)ずっと来ないけど、何かあったの?って、心配して聞きにきましたよ」と言われたので、今寄って来たところだと返事をした。

お寿司屋さんは、私がちょっと変わっている人間だと承知しているので、長いこと顔を見せなくても心配したりはしなかったはずだが、苺屋さんに心配をかけていたというのは予想外で、しかも、"友達" と呼ばれたのは更に予想外で、"友達" の定義が増々浅いものになって行くのを感じながら、「友達って何だ?」と首を傾げながら家に戻って来た。

家に戻って30分も経たない内にクーリエが荷物を配達に来た。

届いたものは IXL の刻印の付いた 2 本のポケット ナイフ。
どちらもひどく傷んでいるが、それを承知でインターネット オークションで買ったのは、古いブレードの品質を見たかったからだ。


上:bone handle、下:fibre handle と説明されていた

こんなに傷んではいるものの、折りたたみ式のブレードは全くがたつきも無く、少々かたいが、しっかりと鞘にも納まる。

作業中に手を切りたくないので、ブレードを研ぐのは他をきれいに掃除してからだ。

黒いハンドルの方はクラックが入り、浮いてしまっていたため、Hacking knife を使って取り外し、木で代えを作ることにした。



中は両面ひどく錆び付いていた。




稀釈したビネガーに浸けて錆び落としをしている間に bone handle の方の手入れを始めたのだが、長い年月の間に、研がれて形が変わってしまっているように見えるブレードをそのまま研ごうか、シェイプを直して研ぎ直そうかといまだ悩んでいる。

使い捨ての手袋が真っ茶色になるほど汚い作業をしながら思った。
私はやはり、人と話をしている時よりも、一人で何か作業をしている時の方が好きだ。


夕食時に同居人たちに今日の出来事を話すと、パトカー軍団が目の前をものすごい勢いで走り抜けたのは、その付近の家の敷地内からモーターバイクを盗もうとしている3人組が居ると通報を受けた警察が、緊急出動した正にその時だったようで、その後車(盗んだ車)に乗り込み逃げた犯人を追いかけ、最終的には道に敷いたスパイクで車を動けなくして捕まえたようだよと、同居人が言っていた。

犯人は非常に危険な運転をしつつ、私が立ち寄った公園の前の道路もハイスピードで通り過ぎていたらしい。私が出掛けた時間帯に、行った場所で事件が起こっていたというわけだ。
たまに外に出て、たまたま出くわしたカーチェイスにもし巻き込まれていたら、運がないというよりも、それが私の運命だったんだろうなと思うしかないんだろうなと、そんなことを考えてしまった。



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