29.12.18

ANNIVERSARY 松任谷由実




私だったら、泣いちゃって弾けないな...


笑える木工

20年以上前のことになるが、『笑う哲学者』土屋賢二氏の本を子供達に読むようにと勧めたことがある。特に何かにストレスを感じている時には、氏の本が特効薬となるに違いないと思ったからだ。

小難しい言葉を並べ立て、一部の人にしか理解できないような、読み始めた途端に頭の痛くなる(或いは眠くなる)ものを哲学だとしてきた人々からはおそらく顰蹙を買うに違いないが、土屋氏の何でも疑ってかかる姿勢というのは、物事を多角的に見、でき得る限り正確に理解する上で欠くことのできないものだと私は思っている。
氏は、物事を深く考えすぎていると言っても過言ではないほど真剣に(多分真剣に)、物事をああでもない、こうでもないと(又は、ああだこうだと)論じており、そのようにして考えれば考えるほど、問題としていたことがどうでもよくなってくる(真剣に考える価値が無いように思えるようになってくる)という面白い現象にはまり込んでしまうのだが、それはこの世で生きていく上で至極大切なことであるように、私には思えて仕方がないのだ。


さて、アトリエでの生活はと言うと...

私はこれまで "几帳面な物作り" を心掛けてきたが、綺麗にできているというだけでは何の面白味もなく、一旦生活の中に溶け込んでしまうと、全く気にならない存在になってしまうことに、最近気付いてしまった。

非の打ち所のない立派な家具よりも、見て「ふふっ」と笑えるようなものの方が存在感があるよなと、何故だか強く思ってしまった私は、狭いアトリエで邪魔で仕方がなかった激安扇風機のちゃちな足を、重量のある端切れ板(パープルハート)に取り替え、その安っぽさを全く損なわない仕上げにすることに成功した。


写真を撮って同居人たちに送ったところ、案の定ウケた。
同居人にウケただけではなく、アトリエに降りて行って、それを見る度に、自分でもあまりの安っぽさに思わず笑ってしまうのだが、見かけとは大きくかけ離れた使い心地の良さには非常に満足している。これまでのクロスの足は、扇風機が回るのに合わせてカタカタと音を出し、少々耳障りだったが、この板に替えてから、扇風機が付いていることを忘れるほど静かになった。しかも、板の色はみるみる変化し、今は完全な青紫色になっていて、何だか綺麗だ。



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父が使っていた4本の揉み錐は、柄が長く、狭い空間で穴を開けたい時に使うことができないという欠点があるため、短い柄の錐を探していた。
もちろん、新品ではなく、中古で質の良い物が出ていないかと探したのだが、この手のものは国内ではそう多く出品されることはないようで、欲しいと思ってから何ヶ月かかかってようやく手に入れたのは、Footprint の Bradawl 3本セットだった。



インターネット オークションで 3本 $14.00(+送料 $4.00)で落札した錐は、先がマイナス ドライバーのようになっていて、グルーと思われるものが付着していた。
マイナス ドライバーって錐として使えるのか???

私は "(私にとって)一般的な錐" が欲しかったので、ヤスリで四角錐に削り、柄の部分は剥がれかけていた塗装を削り落とした後、シェラックを塗っておいた。



この小ぶりな錐は、穴を開けるのはもちろん、印を付けるのに最適で、思った以上に重宝している。


1年ほど前に買ったRecord No.50 のヒビ割れは、エポキシ グルーで取り敢えず接着し使っていたが、グルーがさほど強くはなかったため、溶接機を買うまでの間もたせるようにと、Loctite Quick Metal Glue を使って接着してみた。


側面のヒビ割れ部分はほんのわずかのギャップしかなかったため、グルーがしっかり割れ目に入るのか疑問に思ったが、予想以上にしっかりとくっついたようで、一般に売られているエポキシ グルーなどよりは遥かに強く固定されたようだ。

ただ、1.5mm ほどのギャップに入れたグルーは2日経っても乾かなかった。
考えあぐねた末に、金属の削りかすを一緒に埋め込むという方法を取ったところ、功を奏したようで、これでしばらくは問題なく使えるだろうとホッとした。




今月買ったもののうち、使い勝手が良いものは、油を染み込ませた布を入れておく100均のケース。

椿油は工具類の錆を防ぐためのもので、アトリエで使用。
ホホバ オイルはキッチンに置き、和包丁の錆止めとして使っている。
この容器はサイズが丁度よく、開け閉めが楽で、蓋のストッパーもよく考えられた作りだ。




多くの木工を楽しむ人々が、木製品で身の回り品を揃えるのを喜びとしているが、私は木製の食器やらレードルやらを使う習慣が無いので、そのようなものはほとんど作らず、上記のようなプラスチック ケースを使うことにも違和感はない。

歳をとるに連れて、"こだわり" というものがどんどん少なくなって来ているような気がする。


18.12.18

2018年の師走

日中の最高気温が24℃にもなった今日、暑さのせいで身体がだるくてたまらなかった。
真夏でも30℃を越えることが滅多に無いNZに15年以上住んでいると、もう身体が一年中涼しい気候に順応してしまっているため、24℃でも暑く感じ、27℃を越えると『たまらなく暑い』という領域に入ってしまうのだ。慣れというのは恐ろしい...


同居人Tは先週いっぱいで今年の仕事を終えることになっていたのだが、今日も呼ばれたらしく、日当3万円を優に超える職場(とは言え、Tの職種では破格値=知り合い価格)に手慣れた作業をしに出掛けて行った。

Hは予定通り今週末に仕事納めとなるようで、クリスマスから年始にかけての休暇は、BFと国内の温泉地に旅行に行くらしい。真夏に硫黄の匂いしかしない温泉地旅行... ホテルが空いていたのだろうか?
ちなみに、Tは年明けに友達と日本に遊びに行くことになっており、HとBFは来年7月にそれぞれの故郷(日本とオランダ)に2人して2週間ずつ行くことになっている。HのBFは日本初上陸なため、物珍しいものだらけで、今から非常に楽しみにしているのだが、その楽しみの内の一つである "鯨を食べる" ことに関しては、Hは全く乗り気ではなく、鯨料理専門店はやめて、鯨肉も出る居酒屋の方がいいな... と、居酒屋探しをし始めた。

私は小学校の給食で鯨を食べさせられた世代であるが、給食だったせいか、美味しいと思った記憶など全く無く、鯨 = 「臭い」とか、「ボソボソ or モソモソ」とかいうイメージしか湧いてこない。T とHはおそらくこれまでに鯨を食べたことはないだろうが、日本のスーパーマーケットで売られていた鯨肉パックは見たことがある。見るからに血腥い感じがし、我が家ではレバー同様とても食べる気にはならないシロモノだ。

余談だが、NZで有名なベニソン(鹿肉)料理は、私たちにはどうしても『獣の味』という感じがしてダメだった。





先日、久々に一人で車を運転して食料品の買い出しに出かけた。
運転しながら、86歳を越えた母が最近車の運転をやめたと、日本に居る長男から連絡があったことを思い出していた。

長いこと無事故無違反で、買い物やら病院通いに毎日のように車を使っていたらしいので、運転をやめると決め、車を売り払ってしまったら、さぞかし不便になったことだろう。
私はたまにしか出かけないが、必要なものを買いに出かけるのに車が無いと非常に不便であることは確かで、私もその内母のようにシルバーカーを押して近場に買い物に出かけるくらいしかできなくなる日が確実に来るんだよなと思ったら、歳を取るのって残酷だよなと、更に強く思ってしまった。

シルバーカーを押して歩く時のために、足腰を鍛えておかなければならない。

長年膝の痛みを我慢し続けてきた母が、シルバーカーに支えられているとはいえ、歩いて買い物に行くことで更に痛みを悪化させはしまいかと、そちらの方が気になって仕方がない 2018年の年の瀬...

来年はどんなサプライズが待ち受けているのだろうか?


27.11.18

眠れない深夜に一人起きて考えた

夕食後すぐに寝入ってしまったため、深夜1時前に目が覚めてしまった。
もう寝られない...

作業途中の木工も、作らなければと思っているエプロン製作も、音を立てるので深夜に作業は出来ない。

仕方がないので、作ろうと考えているものを列挙し始めた。

 1.  作業用エプロン&アーム カバー
 2.  コーヒー テーブル
 3.  タンスの上に置く棚
 4.  錐などの小さなツールを入れておく箱
 5.  これまでに作ったステンド グラス パネル用のフレーム(複数)
 6.  iPhone 用アンプ
 7.  鋸目立て板
 8.  ステンドグラスのミニ ランプ
 9.  観葉植物用スタンド
10. Stanley No.45 Plane & No.55 Plane の収納ケース
11. Keepsake Boxes
12. 机の上に置く小物入れ
13. ステンド グラスで作った巨大蝶の標本箱 or ディスプレイ テーブル(動ける間に作らなくては...)

とりあえずはそんなところだろうか...

そして、この夏中に『やらなければならないこと』は、

1. ベランダのデッキの修理
2. バスルームの窓枠の補修
3. バスルームのペンキ塗り
4. 家中の窓枠の再塗装(全て木枠で、ペイントが剥がれてきているため)

出来ないことはないが、気が重い。
だが、大家さんに頼んで業者を呼んでもらうとなると、業者が家に入って来て非常に居心地が悪くなる。家も開けることができず、裏庭のアトリエで作業しているわけにもいかず、私は何もできなくなってしまい、ストレスの塊となるのは目に見えている。
そう、不便極まりないため、自分でやるしかないのだ。

また、専門業者であっても綺麗に仕上げてくれるとは限らない。安い業者に頼む可能性が大であることはこれまでの経験でよくわかっているので、自分でやった方が綺麗にできるのではないかと、ついつい思ってしまう。しかも、費用はさしてかからないだろうし...

自分の持ち家ではないのに、自分で直す。貧乏な家に生まれ育ったおかげで、できることが多くなっているのは良いことだとは思うが、自分がもう少し若かったらよかったなと、折に触れて思うようになった。


今日はNo.4 の錐用ボックス作りかな...
簡単なものから片付けていこう...


16.11.18

Recutting Saw Teeth, Sliding Bevel & Bluemoon

もう11月も半ばを過ぎた。

長男が東京に帰ると、我が家はまた何の代わり映えもない生活に戻ってしまい、全く覇気の感じられない非常に静かな家となっている。


いつものようにアトリエに降りて行くと、必要に迫られて作らなければならないものと、直ぐにやらなければならないわけでもない手直しが必要な工具類が目に入ってくる。
取り敢えず、作らなければならないものに取り掛かるも、不完全な工具をそのままにしていることに気が散り始め、直し始めてしまう...  そして、作業途中のものは次の日、また次の日と完成の日がどんどん延びて行くというわけだ。


2年以上前に買ったヴィンテージものの Spear & Jackson の dovetail saw は、歯がガタガタで、歯を新しく切り直す必要があった。




買ってすぐに、雲の上のお師匠さんのやり方に倣い、ガタガタな歯の部分をヤスリで全て削り取り、hacksaw を使って歯を切ることを試みたのだが、持っている hacksaw では上手くいかず、納得のいく仕上がりにはならなかった。
そして、そのまま放置すること2年...

数週間前、ふとその鋸が目に入り、歯を再度切り直し始めたのだが、まず、2mm 幅に歯の切り込みを入れるための治具を丁寧に丁寧に作り、再び 、新しいブレードを取り付けた hacksaw をお師匠さんの指示に従い少々調節した上で使用...   が、やはり上手く切れない...

鋸のプレートが硬いためか、hacksaw のブレードが治具の線通りに入っていかず、これでは埒が明かない(らちがあかない)と、他の方法を探し始め、見つけたのは父の使っていた日本の目立てヤスリだった。



使い込まれた少々欠けのあるヤスリを使って切ってみると、あんなに硬かったプレートがいとも簡単に、しかも素晴らしく綺麗に切れた。

次は、入れた切り込みに沿って三角ヤスリを当て、"刃" を作っていくのだが、これは日本の鋸の目立てとは比べ物にならないほど簡単な作業である。
そして、Saw Set を使ってアサリを出して作業は完了。

このようにして新しく歯を作り直した Spear & Jackson の鋸は非常に切れ味が良く、また、扱い易さでも他に優っているように思えた。

長い間気になっていた鋸の目立てを終え、ようやく踏み台製作に取り掛かると、製作に必要な測定器の一つが使い物にならないほどイイカゲンな作りであることが判明。


4年近く前に買った Stanley の Sliding Bevel と呼ばれる測定定規を使って、固定した傾斜角を板に記して行くと、sliding bevel の表を使った場合と裏を使った場合の角度が微妙に違っていて、最終的にピッタリ合わなくてはならない線が 2mm 近くズレてしまったのだ。

調べてみると、ブレードが真っ直ぐでなかっただけではなく、持ち手部分も大きな段差ができていて、不正確極まりない作りであったため、平らなガラスの上に貼ったサンドペーパーでハンドルをひたすら削り、ブレードは細かい目のヤスリで根気よく丁寧に削らなければならなかった。

新しくもう一丁買ってもいいかなと、精度の高いものを探していたのだが、どこぞのHPに、あの日本の有名な測定器メーカー『シンワ』製でさえ、ガッカリする作りだったと書かれていて、シンワもダメか...  はてさてどのメーカーのものを購入すればいいのだろうか... と、また探さなくてはならなくなった。
* ちなみに、Bahco 製は雲の上のお師匠さんが「しっかり固定することができない」とダメ出しをしていたので速攻で候補から外れた。

合格点を付けられそうな sliding bevel を探すこと2週間余り...

その間は仕方なく、手直しした Stanley を使って作業していたが、角度を固定するツマミが非常に邪魔な位置にあることにイライラがつのり、結局、自棄っぱちでシンワ製を注文してしまった。注文した翌日には届いてもおかしくない同市内に店があるのにも関わらず、2日も経ってようやく発送されたとの通知が来た。
なんともはや、やる気のない企業であることよ...


裾広がりの安定した踏み台にすべく、製図した通りに角度を付けて板を削る。
仕上げ鉋をかける直前までは、ザクザク削れる刃口が広めの鉋を使い、時々sliding bevel で角度を確かめながら削り込むのだが、テーブルソーなどを使えばあっという間に出来上がるだろうものを、あえて鉋だけで作るのは、感覚を良くするために他ならない。

sliding bevel で角度を測ると、コンマ何ミリという狂いをしっかり見つけることができる。その狂いを矯正できるのは、厳密に言えば、非常にシャープに研いだ刃を付けた仕上げ鉋だけで、極浅く刃を出し、盛り上がりの大きい側に若干重点を置く気持ちで、一度だけ鉋をかけて確かめる...  一度だけで事足りる場合もあれば、二度三度と鉋を滑らせる必要がある場合もある。その加減は慣れでわかってくるようになる。

そんなに厳密に揃える必要があるのか...  
もしかしたらそこまで正確にする必要はないのかもしれないが、私はそうやって自分の感覚を鋭くする努力をしているのである。



ベランダのブルームーンが綺麗に咲いた。
手入れをしてくれている同居人Tのおかげで、新芽も沢山出て来ていて、非常に元気だ。




23.10.18

3 TPI

6 TPI のバンドソー ブレードでは、板厚を薄くしたい場合には特に、切り口がうねってしまってどうしようもなかったため、3 TPI のブレードを買いに行った。

バンドソーを買った店に行き、店員にブレードの型番を言うと、店に陳列してある物を探し、あいにく品切れだと言っていたのだが、それではオーダーできるかと聞くと、そこでようやくコンピューターで在庫を確認し出し、長いことかかって「在庫があったよ」と...

初めから倉庫にある在庫を確認しましょう...

打ち出されて来たインボイスには私の名前ではなく、全く違う企業の名前が書かれていたが、それを見たら、商品管理のみならず顧客管理もが極めてイイカゲンだという事がよくわかった。

そのイイカゲンな会社から買って来たブレードのサイズは、表示よりも若干短く、バンドソーのブレード テンションを最も緩くしてようやく何とか装備できたのだが、一旦外れたブレード テンションを緩めるためのボルトを元に戻そうとしても一向に入っていかず、吐き気を覚えるほどのストレスを抱えながら、同居人Tに見てくれないかと頼んだ。
Tによると、ボルトの先端部分のネジ山が潰れてしまっていて入って行かなかったのだとのこと...
買ってから1年ほどのバンドソーで、一度もブレード交換をしたこともなく、そのボルトの先端に触れたのは今回一回だけだ。ネジ山はそんなに簡単につぶれるものなのだろうか?

また、下のホイールの位置を調節するためのネジは、4本中1本が壊れていて、空回りするだけだった。(下のホイールを調節したのは今回が初めてだ)

どう考えても、品質に問題があるようにしか思えない。
ちなみに、私の買ったバンドソーは HAFCO Woodmaster BP-360 。オーストラリアのブランドだが、台湾製? よくわからない。

散々な目にあったブレード交換は、私よりも遥かにメカに強いTのおかげで無事終了し、バンドソーは使える状態になったものの、欠陥が無いとは言い切れない機械を使い続ける不安が残り、気分はあまりよろしくない。


取り替えた 3TPI のブレードで厚い板を試しに切ってみると、切り口はさすがにガサガサではあるが、これまでの 6TPI のブレードでは不可能だった"真っ直ぐに切る"という作業がいとも簡単に、しかも素早くでき、とりあえずはこれで様子をみようと思った次第である。


私はやはり機械モノは好きではない。
テーブル ソーから電動ドリルに至るまで、"思い通り" に使いこなせた試しがない。
安物しか買っていないせいだろうか...?




20.10.18

注文製作に終止符を打つ時

つい先頃、オークションに出品している鍋敷を見て、こういうので Vent Cover を作ってもらえるかという質問が来た。

注文製作を引き受けると、どんなデザインで、サイズはどれくらいでと、何度もオークション サイトの Q&A でやり取りをしなければならず、結構面倒なのだが、他の通信手段を厳しく禁じられているため、その方法で注文を受けるしか方法は無い。

とりあえず幾つかのパターンを描き、それを掲載した後に、相手が制作を依頼するかどうかを決める。

パターン製作にかかる時間は、実際に注文に至らなかった場合は請求の対象にはならず、時間をかけてデザインしても無駄になる場合がままあり、決して『良い仕事』とは言えないのだが、それでも自分の手で作ったものが見ず知らずの誰かの家で使われているというのは嬉しいことで、もし自分がこの世から居なくなっても、自分の作った物が何処かで使われているとしたら、製作した意味はあると言えるかもな... などと、すこぶる嬉しいフィードバックを受けたときなどは特に感慨深く思うものの、中には他人の労苦を慮る習慣が全く身に付いていない輩が少なからず居るのも確かで、何度も何度も熱心にやり取りをした挙句に、デザインが出来上がるとプッツリと音沙汰が無くなり、「あれは何だったの?」という状態になる。そんな輩に遭遇すると、もう注文製作は受けないことにしようとやはり考えてしまう。

歳を取った私は、もう面倒なことに関わりたくないという思いが更に強くなった。
正直なところ、人の誠意の無さというものに心底ウンザリしてしまったのだ。

いよいよ注文製作をやめる時が来たかな...
今回は真剣にそう思った。


私が先月買った畔引き鋸を作った職人もまた、手間暇かけて作った鋸を信じられないほど安い価格で販売していて、側から見ても「これじゃやっていけないだろう」と思ってしまうのだが、それでも、沢山注文が入れば食べていけるだけの収入にはなると、骨身を惜しまず働き続けているのである。
そして、良心から代金後払いで商品を送ってあげると、此れ幸いと支払いを踏み倒す不届き者が出てくる... なんと嘆かわしい世の中であることよ。

また、その手引き鋸を買って販売している業者は倍近い(或いはそれ以上の)価格を付けて販売していたりもする。
『物を右から左に流すだけの人』が楽をして収入を得、私腹を肥やしているのを見ると、私は非常に憤りを感じてしまい、自分の作ったものを販売店に託す気が更に失せる。

農家も、酪農業者も同じである。
汗水垂らして働いている者は、労働に見合わない収入のまま一生を終えることになり、労働者の上前をはねる輩が豪勢な生活を送るようになっている社会...
『作る側』にとっては全くもって良い社会ではない。

この経済構造はおそらく改善されることなく、不均衡感を増大して、聖書が言うところの "この世" が続く限り永遠に存続し続けることだろう。

そんなことを考えていると、歳を取ったことがことさら嬉しく思えるようになる。





今、NZは初夏。
ベランダで最初に咲いたのは、真っ赤なバラの方だった。



18.10.18

何かが変わる兆し?

今年に入ってから、私の周りは何だかとても慌ただしい。

4月初旬に私は日本一時帰省。NZに戻った正にその日に大家さん夫婦がやって来て、「明日から外壁掃除業者が来て、清掃後塗装業者が来ることになっている」と...
5月には外壁の塗り替えが信じられないほど長い期間かけて行われ、その後業者が周囲の木全てを切り倒しに来た。
9月初旬、家のある通り全体の舗道のコンクリート敷き直しが約1ヶ月間に渡って行われ、10月初旬に長男が5年振りに日本から遊びに来てくれた。
長男が帰ると間もなく、今度は道路のアスファルトを敷き直し...  夜8時〜翌朝5時の騒音に2晩晒され、ようやく道路工事は終了した模様。




何故こうも沢山の事が今年に集中したのだろうか...
何かが変わる前兆なのだろうか...

何の代わり映えもなかった過去数年間とは明らかに何かが違うと感じるのは、私だけなのだろうか...


次に起こることによって心を引き裂かれることがないようにと祈るばかりだ。


9.10.18

20周年

彼の人が居なくなってから20年が経った。

この20年で、当時高校3年生の超スレンダーだった長男はちょっとお腹の出たオヤジになり、中学2年生で陸上部の花形だった次男は、運動とはほど遠い生活を送っているもののいまだスレンダー... ではあるが、従姉妹から「歳とった〜」と言われる風貌になり、小学3年生の超シャイだった娘は非常に "腰の据わった" OLになった。
仕事はITコンサルタント、ビデオエディター、グラフィック デザイナーと、皆それぞれの道を歩んでいる。


20年目の記念日を祝うためにはるばる日本からやって来てくれた長男を歓迎するかのように、当日空は快晴で、近くの公園の桜が咲き誇っていた。


もちろん、日本の桜並木とは比べ物にならないほどこじんまりとした規模ではあるが、淡い桜の色は人々を惹きつけるようで、様々な国の人が花見に訪れ、写真を撮り、樹の下に寝そべったりなどして、桜の季節を満喫していた。


我が家は一気に『写真コンテスト』モードに突入し、各自がそれぞれの感性で構図を決め、切り取った写真を披露し合った。
感性は、三者三様ならぬ四者四様で、全く同じ木を撮ってもまるで違った雰囲気のものとなっていた。それを面白おかしく評価し合うのもまた楽しい。





長男はたった4日間の滞在だったが、オークランドに着いたその晩にイカ釣りに出かけ、不発だったため翌晩にもイカ釣りに再挑戦。3日目にはイカを諦め鯛釣りに行くという熱の入れようで、傍目には元気そのものにしか見えなかったが、「あまり調子が良くない」と...

次男はこれまで経験したことのない連夜の釣りに苦笑いし、「そろそろ帰ろうよ」と言っても、兄ちゃんが「え〜、もう少しやろうよ」と言って帰らせてくれなかったんだと笑っていた。

3日目の深夜、生まれて初めて鯛を釣り上げた長男の写真が携帯電話に送られて来た。
満面の笑顔の彼に釣られた鯛は、サイズが小さかったためリリースされたが、それでも、自然の中で弟と一緒に釣りを楽しむ事ができたのが何より嬉しかったようで、小さい頃もこうやって2人で川釣りに行ってたよねと、しばし昔話に花を咲かせていた。

20年... 色々な事があったねとしみじみ話しながらも、子供の時のようにはしゃぎながら、終始ケラケラ笑っている子供たちを見て、片親でも素直に明るく育ってくれたことを私は心から嬉しく、そしてまた、有り難くも思った。




楽しい時間はあっという間に流れてしまい、長男は今朝の便でオークランドを旅立った。
そして、つい今しがた、無事成田に到着したという知らせを受け、皆ほっとしたところである。

「子供たちは皆真っ直ぐに育ってくれたよ」「これからも、ずっとそこから子供たちを見守っていてよね」
彼の人の写真を見ながら、私は心の中で何度も懇願し、眠りについた。




13.9.18

連絡ができない

今月に入り、オンラインで日本の畔引き鋸と鉄釘切り鋸を注文した。
職人が一本一本丁寧に手作りした貴重な物だ。

海外には送らないということだったので、来月こちらに来ることになっている長男に持ってきてもらうことにしたのだが、支払い方法は郵便振込のみで、注文を入れると、発送準備が整い次第振込用紙が送られてきて、入金が確認された後に商品が発送されるとのこと...、いつ頃届くのかわからず、少々不安になった。
そこで、注文を入れる際に、もしできれば、振込先口座番号を先にメールで教えていただけるとありがたい。振込用紙を写真に撮って送ってくれても構わない。また、オンラインで振り込みできる別の銀行口座か、Paypal のアカウント等があったら教えて欲しい... と注文画面でメッセージを書き添えたが、3日待っても返事が来ず、注文はどうなってしまったのだろうと案じていたら、その職人のブログにお父様が亡くなられたという投稿があるのを見つけた。

そんな状況では発送どころではないだろう。メールで返事を送る時間も気力も無いに違いないと、その旨を長男に知らせ、長男がこちらに来るまでに届かなければ、またその内に送ってもらえばいいかと思っていたのだが、その翌日、郵便振込用紙と共に商品が送られてきたというので驚いた。
忙しいさなかに丁寧に梱包して、料金後払いで送ってくれたのだ。

すぐに振込用紙の番号から振込先の口座番号を調べ、オンライン バンキングで振込を済ませ、お礼と、お父様が逝去されたことへのお悔やみをメールで送ろうと試みたのだが、注文確認メールに書かれていたメールアドレスにも、そこのウェブサイトに書かれたメールアドレスにも、「指定されたアドレスが見つからない」とのことで送信できず、それではと、ブログにコメントを書くも、送信すると、「許可された地域(国)以外からの投稿はできません」と出てきて、完全にシャットアウトされた形になった。

そんなことってあるんだ... と、これまで知らなかった世界を見せられた気分になった。

忙しい長男に、私の代わりにブログにコメントを残してくれないかと頼むのも憚られ、たった一人で鋸を製作し続けている職人に電話して作業を中断させるのも気が引け、「あとは手紙を出すという手段しか残っていないか...  だが、手作りの鋸はまだ手元に来ておらず、使った感想も伝えられない... 」と、ああだこうだ考えていたことを、遅ればせながら来月手紙に書いて送ることにしようと、やっと観念したところである。


畔引き鋸は、雲の上のお師匠さんに一本贈りたいと思っているのだが、私自身使ったことがないので使い心地がわからず、また使い易いサイズがどれかも全く見当がつかないため、今回は購入を断念した。


今日は eBay でUKの業者に真鍮のヒンジを注文したが、直接NZに送ってくれないようなので、YouShop というNZ Post が運営する代行業者に受け取り& 配送を頼まなければならなかった。送料がいくらになるのか定かではないが、NZ国内で同じような品質のヒンジを注文したら、たった1個で$14.00 +送料($4.95)というのがおそらく最も安い価格だろうと思うので、送料を含めたとしてもそれよりははるかに安いに違いない。

安く手に入る物が極端に少ないNZ...
当然国内には eBay も無ければ Amazon も無い。



6.9.18

Stanley No.4 1/2 Plane, Toothing Plane, Panel Raising Plane, etc...


さて、家中のカビ掃除やら、風邪のおかげでずっと滞っていた、最近購入した中古ツールたちの手入れにようやく取り掛かり始めた。

サンドペーパーも切らしていたため、それも購入。今回は日本の Riken のものを購入してみたのだが、届いたものの片方は、どうみても Riken ではないだろうと思える代物で、返品しようかと一瞬思ったが、面倒なのでそれでよしとした。




また、これまでは車関係の商品を売る店で1枚 $2.00 近いサンドペーパーが約半額になるセールを待って買いに行っていたのだが、ネットで調べたら通常価格がその半額〜1/3 という所があり、初めてオンラインでオーダーを入れたところ、対応は速く、届いた商品はこれまで使っていた物と全く同じ Norton の Dry Paper と、おそらくそれと同等品だろうなと思える Sunmight の Wet & Dry Paper だった。これだったらもう車用品店のセールを待つまでもなく、いつでも注文できる。




手こずっていたのは、Stanley No.4 1/2 の底を真っ平らにする作業で、フラットなガラスの上に #180 & #240 のサンドペーパーを貼り付けてひたすら削っていたのだが、なかなかフラットになってくれず、度々気が萎えて中断しながらの作業となっていた。


ようやく底がほぼ平らになったので、刃を研ぎ直し使ってみると、これまで使っていたNo.4 よりも安定感があって使い易く、予期していなかった"副産物"が手に入ったことをけっこう喜んでいる。(実は、これと一対でオークションに出品されていたもう片方の鉋が欲しかったのだ)



Stanley No.4 1/2 とセットで売られていた Made in Germany の Toothing Plane は、ブレードに Kirschen(サクランボ)のロゴがついていて、予想通りラミネートされた鋼であった。
私はドイツ製の刃物が総じて好きで、少し前にもゾーリンゲンの小ぶりの洋裁バサミを買ったのだが、昔のドイツ製刃物は本当に質が良く、切れ味も長持ちし、研ぎ直して使い続ける楽しみがある。






この鉋は、ベニヤ板を接着する際に接着強度を増すために使うことで知られているが、それ以外にも、通常の鉋では削り難い板目が交差している板を、仕上げ鉋をかける前にこれで均しておけば、逆目でも綺麗に鉋がけができるようになるという、優れものなのだ。
なかなか国内では手に入り難いこのテの鉋を入手できて、非常にラッキーだった。

金物のカンナと違って、木製のものは、使用している間に木が擦り減るため、折に触れて台を修正する必要が出てくるが、鋸の目立てなどと同じで、台直しの仕方を一度覚えてしまえば、修正に時間がかからず、さして苦にはならない。
(日本の使い捨て鋸は便利に思えるだろうが、切れ味が落ちる度に買い替えていたのではお金の無駄だ。一度目立ての仕方を覚えてしまえば、捨てていたお金がどれだけ勿体無かったかがよくわかるだろう)



Panel Raising Plane は、ベルギー製 (Ude Lambert of Liege, Belgium) で、ブレードは Goldenberg (France) 。
オークションで入札する前に、ブレードの品質をインターネットで調べてみると、『とても良い』というコメントが幾つか載せられていた。
とても良いと言っても、どの程度で良しとしているのか、はっきり言ってわからない。
それでも、skew plane を一つ欲しかったため購入することに...





ブレードには目のマークがついていた。
初めて使うフレンチのブレードだが、これもまたラミネートされたブレードで、研いでみると切れ味は想像をはるかに超えて良く、正直驚いた。



出品者が概ねシャープに研いでくれてあったものの、刃が弧を描いていたり、研いである部分が均等でなかったりしたため、もう少し修正が必要だが、恐ろしく切れ味の良い刃だということはよくわかった。


こちらのインターネット オークションで購入した日本の安来鋼でできた電工ナイフは、まだ研ぎが甘いものの、重厚で良く切れる。
私はもちろん電工ナイフとして使う目的で買ったのではないが、ほかの用途でも活躍してくれることだろう。




このように、世界の色々な場所で作られた昔のツールたちを実際に手に取って思うのは、昔の職人は良い仕事をしたということだ。
質の良い昔のツールは何十年経っても使い続けることができる。
"職人" が作るものは、"商売人"が作るものと天と地ほどの差があるのだ。

職人は自分の能力の限りを尽くし、採算を度外視して良いものを作ろうと必死になるが、商売人はいかにして儲けを出すかが最優先課題だということを忘れてはならない。

「こんな古いものにお金をかけるくらいなら、新しいものを買った方がマシだ」と考える人も多いだろう。確かに "大量生産における技術" は進歩しているかもしれない。だが、悲しいかな、それが品質の向上に繋がっているかと問えば、NO と言わざるを得ないだろうと私は思う。

そこいらの安売り店で売られている安価なツールは買うべからず。
正に、『安物買いの銭失い』である。



29.8.18

この冬3度目の風邪

先週の金曜朝から発熱と痰の絡む激しい咳のため寝込んでいた。

39度を越える熱が 3日続き、薬を飲んでようやく37度台に下がり、ホッとしたのもつかの間、またすぐに39度近くまで戻ってしまうというのをその後2日繰り返していたが、6日目にしてようやく平熱に戻り安堵した。

5日間食欲ゼロ。

金曜日には同居人Tがポキ丼を買って来てくれたが、やっとのことで半分食べて、翌日の昼に残りの半分を食べ終わり、その夜にはTがマクドナルドのフィッシュ バーガーを買って来てくれたが、それも半分でギブアップ。
何を食べても苦くてたまらなかった。

バーガーの残りの半分は翌日の夕食時に食べた。

この5日間で食べた物は、他には小さなピタパン1枚と、目玉焼き1つ、ソーセージ1本だけ。
口に入ったものが極端に少ない上に、強い薬を飲み続けて胃を悪くしたのだろう、嘔吐すること数回...

今回は厄介な風邪(多分インフルエンザ)だった。

Tは自身の具合も良くないのに、台所の洗い物もしっかり片付けてくれ、私が洗濯機を回したままでダウンしたら、洗濯物も全て干してくれ、食事の用意もしてくれたりと、よく気を利かせて働いてくれていた。(Hは金曜朝から日曜夜まで不在だったが、月曜日には、仕事から帰って来て、疲れた体で夕食の支度をしてくれた)

本当に有難いことだと感謝すると同時に、段々と年老いて、世話になることが多くなって来たことを心から申し訳なく、また情けなく思い、このまま身体が弱って行ったらお荷物になるだけだよなと、そんなことを考えていたら悔し涙が溢れて来た。
自分の身体なのに、自分の思い通りにならないことに無性に腹が立つようになった。

死ぬ間際まで元気でいなくては、周りがかわいそうな目にあうと、あと何年か、いや、ことに寄ったらあと何十年か、心に言い聞かせて生き続けなければならないのだなと、しみじみと思った。


... と、こんな話を書いていられるということは、峠を越したということで、今日は朝からご飯を炊き、それで卵雑炊を作り、一昨日辺りからだんだん調子が悪くなりだしたTの病人食を作ったりし、病気の間締め切っていた家中の窓を開けて空気を入れ替えたりしていた。


痰のからむ咳はまだなくならないが、もう薬を飲まなくとも大丈夫そうだ。



24.8.18

20年...

今年10月上旬、彼の人が居なくなってから20年目の記念日に、残った家族がここNZで揃うことになった。

20年か...

産まれたばかりの子が成人式を迎えるほどの長い期間をかけて、一体私は何をしてきたのだろうか...

彼の人の声をいまだにはっきりと思い出せるが、あの人の姿は20年前のままだ。
私だけ歳をとり、一昔前だったら立派に "お婆さん" と呼ばれているだろう年齢になってしまった。



昨日の朝、同居人Hのボーイフレンドがオランダ帰省から帰ってきた。早朝4時にオークランド空港に到着したため、全員風邪引きの我が家で1泊し、すっかり風邪をうつされたようだったが、満面の笑顔で今朝8時過ぎに家に戻って行った。
とても素朴で真面目で、腰が低く、非常に可愛い子だった。
(そういえば、彼の人も素朴で可愛い人だったなと心の中で思った)

Hが彼の身長を190cmくらいと言っていたので、「流石にダッチは大きいな」と常々話していたのだが、同居人Tと会った途端、190cm というのが全くもっていいかげんな推測だったことがわかり、T を"世界一長身な国から来たダッチよりも背の高い日本人" と言って皆で大笑いした。

彼はタイル職人である。
帰る前に彼の行った仕事を見せてもらったが、とてもセンスが良く、ただ単にタイルを貼るだけではなく、アクセントにモザイクを入れて「おっ!」と思わず目を見張る空間を作り出していたのには驚いた。単なるタイル工ではない。
付き合っている当人のHは彼の仕事にはあまり興味がないようなのだが、私は"職人"の仕事を見るのが何より好きなので、非常に興味深く、話を聞いているのが本当に楽しかった。

まだまだ聞きたいことがいっぱいある。


私も、誰に見せても恥ずかしくない家具を作らなくてはと、改めて思った日になった。



22.7.18

木製ツールのカビ対策

日本に1ヶ月弱滞在+長引いた家の外壁のペイント作業のせいでしばらくの間アトリエに入ることができず、締め切ったままだったのが災いしたのだろう、棚に並べてあった木製ツールの幾つかにカビが生えてしまっていた。

木製品のカビ取りはアルコールで消毒するというのが一般的なようだが、今後カビを生えにくくするにはどうしたらいいのだろうとネットで調べてはみたものの、こと木製ツールのカビ対策に関してはめぼしい情報は無く、考えた末に、殺菌、抗菌、抗カビ作用等々で特に優れていると言われている Tea Tree Oil を含ませた布で表面を拭いておくという方法を試してみた。
オイルなので木製品に塗っても害は無いだろうと思うが、効果の程はしばらく経ってみないとわからない。



ツールのカビ対策にと買った Tea Tree Oil だが、Melaleuca alternifolia (Australian Tea Tree Oil) と Leptospermum petersonii (Lemon scented tea tree oil) を混ぜたもので、強いレモングラスのような香りがする。あまりに強過ぎて、カビだけではなく逃げて行く人間もいそうだ。

Tea tree oil は、調べてみるとかなり色々な使い方ができるようで、届いて早々に切り傷だの腫物だのに塗ってみたところ、虫刺されとか汗疹の痒みを抑えるのには確かに効果があった。だが、同居人たちには案の定その香りが不評だったため、同じく抗菌作用があるとされているペパーミント オイルと、刃物の錆止めとしてもよく使われているホホバ オイルを追加で(別の業者からだが)買ってしまった。

* 浅い切り傷/かすり傷には、日本のソンバーユ(馬油)の方が効果があるように私は思う。おそらく個人差があるだろうが...

届いたホホバオイルは100% pure cold pressed, unrefined, organic jojoba oil と書かれていたが、日本で販売されているものよりも格段に安く、500ml で NZ$49、日本円にして ¥3,700 程度。無臭で、肌に塗っても全くべとつかず、恐竜のようにシワシワな手の甲に塗ると、シワシワながらしっとりスベスベになった。

これまでは刃物用に作られた椿油を包丁の錆止めとしても使っていたが、100%ピュアな椿油ではなかったので、包丁に使うのは少々違和感があった。(刃物だけに使うのだったら、多分オーガニックである必要は無いのだが、他にも使い道が多くあるだろうと踏んで、少々高いオーガニックのものにしておいた)

ペパーミント オイルは純正アルコールと精製水を加えてスプレー容器に入れ、室内の除菌スプレーとして使うことにした。夏には爽やかだが、冬にはますますキーンと冷たくなる気がする匂いである。(ラベンダー オイルも抗菌作用があるとのことだが、我が家ではラベンダー臭は歓迎されないため、購入御法度)
生乾きのような洗濯物の不快な匂いも取れてくれると嬉しいのだが、果たしてうまく行くだろうか?


連日の漂白剤の臭いで口の中が苦くなるのを覚えた私は、できるだけ化学薬品を使わないようにと心がけるようになったわけだが、特にアロマ好きというわけではなかったので、その筋の知識はほとんど無く、また、美容に関心があるわけでもなく、それでツールの手入れなんぞしているのである。


何はともあれ、これらの天然の産物だけでカビ退治ができれば万々歳だなと、期待を込めて散財した次第だ。


15.7.18

雨ばかりの冬...カビ取りは完全防備で

毎日々よく雨が降ること...

おかげで壁と天井の境目の角にまたカビが生え始めた。

昨年から使っているカビ取り剤 30 seconds mould off は確かによくカビが取れはするが、要するに漂白剤なので、スプレーで飛び散った細かい液が衣服に付着すると、その箇所の色が抜け落ち、ほとんどの場合真っ白ではなく濃い肌色のような、薄茶色のような色になってしまい、お出かけ着としては使えないシロモノになってしまう。



幸いなことに、歳をとってかなり体型が変化してしまった私は、家着にしかならない言わば作業服を沢山持ち合わせているため、部分的に脱色してしまった服は躊躇することなく捨てられるようにもなり、タンスのお掃除にもなっているのであるが、細かい霧状の液体を吹くということは、鼻や口から吸い込む危険性が大であることも忘れてはならない。


余談ではあるが、かつて、日本の小中学校の給食を作っている業者の見学会で、洗浄中の大量のキャベツの千切りの隣を通過した際に、霧のような水しぶきを若干浴びた父兄が、見学会を終えた後、服に脱色と判断できる斑点が無数に付いていることに驚き、食べ物に漂白剤をかけているのかと、非常に憤りを感じたことを話してくれたことがあった。

給食センターは清潔であるのは当然要求されることではあるが、食べ物そのものに漂白剤を使用するとは以ての外だ。いったい何を考えているのだと普通の人なら思うだろうに、そこで働く人々には異様に映らないというのはどうしたわけなんだろうか。甚だ疑問である。


今回の天井付近のカビ取りは、背の高い脚立を買って来たため、昨年よりも遥かに楽だったが、カビ取りのために NZ$159(¥12,000 強)の出費というのは結構痛かった。


出費は痛かったが、この Rhino Double Sided Ladder は品質的には問題無さそうで、非常に安定していて、ストッパーの動きもたいへんスムーズなため、長く使うことを思えば、買って損はないものだろう。
(高所で作業することには危険が伴うため、安物は断じて買うべきではないと私は思っている)


と、そんなわけで、ここ数日は家の掃除に専念していて、棚作りは中断...

数日前には父から譲り受けた鉋の台を直し、この春日本から買って来たシャプトンの(私にとっては超高級な)砥石修正器「なおる」を使って天然砥石を平らに均してから鉋刃を研ぎ直し、この寒い中汗をかきながら一心不乱に鉋がけをしていたが、木工の作業をしている時の集中力と、掃除をしている時の集中力の違いは歴然だ。


私は、掃除も料理も得意分野ではないように生まれついているとしか思えない。




3.7.18

色鉛筆までeBayで買う時代

濃い色の板に印を付ける際にあったら便利だなと思い、白鉛筆を買いに出かけたのだが、大手の文房具店には、色鉛筆セットはあれどもバラ売りの色鉛筆は無く、お高いアート用品専門店には行く気にもなれず、仕方なく家に帰り eBay で検索...

10本で約 ¥370 ほどの、洋裁にも使え、木工にも使えると説明書きのあった白色のみの色鉛筆を注文した。
洋裁に使えるということは、硬すぎない芯であるはずだと予想しているのだが、届いてみないとわからない。

日本の文房具店にはまだバラ売りの色鉛筆が存在しているのだろうか?多分あるだろうな... 100均でも売っていそうだ... などと、いつも日本と比べてしまう私とは違い、ほとんどの物をインターネットで購入するのが当たり前になってしまっている同居人たちは、リテイルショップで買い物をすることなどハナから考えておらず、すぐに手に入らないことにもさしてストレスを感じなくなったように見える。

直ぐには要らないけれども、いずれ必要になるだろうものを注文しておく。それも余分に... 然るに、長い期間物は溜まったまま...
当面の間たった1本だけあれば事足りる白鉛筆の、残りの9本全部を使い切るのはいったい何年後だろうか?


本当に "良い世の中" になっているのかな?と首をかしげることの多い自分は、日本に住む姉よりももっと時代に取り残されている感があるなと、今日、誕生日を迎えた姉と Line でチャットしていて思った。



1.7.18

病み上がりの洋裁

この冬二度目の風邪を引いたが、この前ほどひどくなく、喉の痛みと節々のだるさが3日ほど続いた後は嘘のようにスッキリ治った。薬も飲まずに回復したのは幸いだったが、時々右耳だけ耳鳴りがするようになっている。その内に気にならなくなってくれればいいなとただ願うのみだ。


身体が本調子ではなく、アトリエに降りて行く気にならなかった時には、ベッドルームの一角に設えたソーイングスペースで作業をしていた。少し前に買った安い厚手の "ズボン"(フランス語?こちらではtrousers と言い、アメリカでは pants と言う)2本の裾上げをする必要があったからだ。

ニット用ミシン糸は遥か昔に日本で買ったものしか無かったが、まだ丈夫そうだったのでそれで良しとした。


買ったズボンはどちらも伸縮素材で、職業用直線ミシンと年代物の3本糸のロックミシンでビロビロに伸ばすことなく縫えるだろうかとかなり心配だったが、抑え金をプラスチック製の物に替え、抑え金の圧を通常よりも弱くしただけで問題なく縫えたため、(*裾を自分に合った長さ+上げ代(縫い代)の位置でカットしたら、捨てる方の布で試し縫いするべし)、最終手段として用意した伸び止めテープを使うには及ばなかった。




針先が若干シャープさを欠いているように感じたため、今回針は新品に交換し、ミシン油もさしておいた。上糸と下糸の糸調子は、針や機械の状態によって大きく変わるのだ。

* 油をさす箇所は取扱説明書に書かれているが、ほとんどのミシンは機械を開けてみることなく油をさすことができるようになっているはずだ。

安いズボンを買ってきても、誰かに丈を詰めるのを頼まなければならないというのは厄介だろうなと、想像しながら縫っていた。頼む手間も、時間も、更には代金もかかることになる。(頼んだ業者が下手くそだったら超ガッカリだし...)

まだ小学生の頃から縫い物をする習慣が身についていてよかったと、心からそう思った。




29.6.18

野菜に例えると...

昨日まで、自分を野菜に例えたことはなかった。

同居人Hはキュウリ、Tはトマト(だとHは言う)、"西早稲田の君"はゴボウ(?)、彼の人はスイカ、そして私はネギらしい。

なぜネギなのかを同居人たちが話していた。
生命力/再生力が半端なく強いというのが最も大きな理由らしいが、私ってそんなに強く映っているんだなと苦笑いしてしまった。

ネギは薬味となることがほとんどで、単独で食べることは滅多に無いのだが、生姜と同様存在感はかなり強く、クセも強い。

あぁ、言えてるかもな... と、ベランダで再生を繰り返す(スーパーで買ったネギの根っこから成長した)ネギを見ると、何だか健気に見えて思わず微笑んでしまった。


単独で檜舞台に立つことよりも、誰かを引き立てる役割を担う方が性に合っているのに、存在感だけは強く、おそらく影響力も強いと言われる私は、やはり『ネギ』なのだろうなと、やけに納得してしまった一日であった。


20.6.18

NZの潮干狩り、寒梅、そして日本の marking gauge

NZでの潮干狩りは、獲ってもいい数量が決まっている。決まっているのだが、地域によってかなりの差があるようで、オークランド(から北)では一人一日50個までとなっているTuatua は、先週末同居人Hの訪れていたタウランガでは3倍の150個まで獲ることができるらしく、日曜の夜、Hが美味しい Tuatua をお土産に持ち帰ってくれた。



*  NZにおける地域ごとの漁獲規制については Fishing Rules に事細かく示されているので、 事前にチェックしておかなければならない。チェックせずに大量に、或いは規格外のサイズのものを獲り持ち帰ろうとしたのを監視員に見つかった場合、高額な罰金を科されることになるようだが、ほとんど制限の無い国から来たばかりの移民、或いは旅行客などは、おそらく規制があることなど想像だにしておらず、「調べる」こと自体頭に浮かばないだろうというのは十分考えられることだ。
全ての立ち入り可能なビーチに明瞭に但し書きされた看板が設置されているのならいざ知らず、知らずに潮干狩りを楽しんで何百ドルという罰金を科されたのではたまったものではないなと、私などは思ってしまうが、その辺はどのような対処がなされているのだろうか?


さて、この Tuatua だが、アサリに比べてサイズが遥かに大きく、味も比べののにならないほど美味しいが、砂を吐かせるのにかなり時間がかかる。
塩水に浸け丸々一晩おいて、ほぼ砂を吐いたという感じだ。(若干残っていた)
私は通常揚げ物用の網の付いたバット(トレイ)を使い、貝が吐いた砂を再度吸い込まないようにしているが、多くは並べられないので、150個も獲って来てしまうと容れ物を探さなくてはならなくなる。平たく大きなコンテナのようなものを買って来ておいたほうがいいかもしれないが、そう頻繁に潮干狩りに行くものでも無し、はてさて、買っておくべきかどうか悩むところである。



Hの希望で夕食はボンゴレ ビアンコ。
やたらと貝が大きいため、"貝だらけパスタ" に見えるが、貝は13個ほど...  ちょうど良い量かな...




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裏庭には寒梅が咲き始めた。


例年は7月に入ってから咲き始める寒梅だが、もう咲いているということは、今年は寒くなるのが早いということなのだろうか?


アトリエに降りて行き、ベンチバイスに革を取り付けた。
これまで板と板の間に作業する物(主に板)を挟んで固定していたのだが、かなりきつく締めないと作業途中にずれてしまい、きつく締めすぎると今度は緩める時に大変になるという、老体には嬉しくない状況だったため、雲の上のお師匠さんがしているように、革を付けなくてはとずっと考えていたのである。
革は挟む部分の外側に留め付け、革を外側に垂らせば革無しでも使えるようにしておいた。



革の威力はかなりなもので、きつく締め上げなくとも全く滑らなくなった。

日本から買って帰った毛引き(マーキング ゲージ)は松井精密工業のもので、日本の経験を積んだ家具職人推奨のもの。



これまで西洋の、ピンやら、ごく薄いカッターやら、ホイールが付いたマーキング ゲージを使って来たが、どれも私にはイマイチの使い心地で、特にピンの付いたものは板をガリガリ削る感が拭えず、記した線に沿って鑿で慎重に削ったとしてもおよそシャープとは言い難い仕上がりになるような "気分" になってしまうのだ。実際にはそんなに気にすることはないのかもしれないが、そのダル(dull)な感覚というのは、作業をする上で邪魔になりはしても、益にはならないだろう。

また、西洋のマーキング ゲージは印を付けたい板に添わせるのに安定しない作りのものがほとんどで、板に添わせたつもりで線を引いていても、板の繊維に逆らえず微妙にズレてしまっていたということが幾度もあった。

その点、この日本の毛引きはよく考えて作られている。
板に当たる面は広く、また、柄は人差し指と中指の間に挟んで持つのに適した厚みとなっており、手全体を使って毛引き本体を包み込むことによって、ぐらつきが抑えられる仕組みになっている。
試しに側にある携帯電話やら本を片手で持ってみるとよくわかる。(重量のある本を持ってみると更によくわかる)
指だけを使って手に取った物を支えた場合と、物を包み込むように掌に当てて持ち、5本の指それぞれの機能を全て使って支えた場合とでは安定度が明らかに違うことは、誰でもわかることだろう。
そう、日本の毛引きを使った場合、印を付けている時にズレる可能性がほとんどなくなるのだ。

刃は流石に日本の刃物だけあって恐ろしくシャープで、なまくらになったらもちろん研ぎ直せる。だが、半永久的に使い続けられるわけではなく、直角に折れ曲がった部分が極端に短くなってしまったら新しい刃と交換しなければならない。交換したくなったときに果たして寸分違わぬものが手に入るかどうかは甚だ疑問である。

... と考えていくと、後々のことを考慮に入れた場合、このような鎌毛引きではなく、割り毛引きと呼ばれているもののように、柄に直接ブレードが刺さっているものの方がいいようにも思えるが、それだと同時に二重線を引くことができないというマイナス要素が付いてくる。ほぞ穴を掘る際の印付けに関しては、この2枚刄が非常に便利なのである。


さて、講釈はこれくらいにして...

例によって安い Pine(マツ材)を買って来たので、自分用の棚作りに取りかかるとしよう。




「ありがとう」ではなく「すみません」

病院に面会に行き、エレベーターが自分の居る階に来るのを待っている時の光景... 到着したエレベーターから降りる人は、必ずお辞儀をしながら降りてくる。 乗り込む際、最後に入ってくる人もまた、お辞儀をしながら入ってくる。「すみません」と言いながらお辞儀をする人が圧倒的に多い。 また、...