30.3.16

Lovely Car & Car Enthusiast

夕食を食べ終わり、同居人たちも私も各自部屋でくつろいでいた時、玄関のベルが鳴った。

いつものことながら、裏に住む大家さんの息子が、来客が多いのでウチの駐車場に車を停めていい?と言いに来たのだろうと、我家の誰もが思っていたのだが、ドアを開けると知らない中年の男性がにこやかな表情で立っていた。

とても上品そうなその人は、穏やかな口調ながら、自分は Car Enthusiast で、外に停めてあるとてもラブリーなフォード エスコートの持ち主にぜひ会ってみたくて来たんだと熱心に話し始めた。

私の車ではないというと、持ち主は今居るかと聞くので、同居人Hを呼び、私は奥に下がったが、話し声が聞こえるので、私と同居人Tは笑いをこらえながらHの受け答えを聞いて楽しんでいた。

その人の家はここから2, 3分の所にあるようで、これまでに何度かこの車を見ていて、自分が若い頃走っていた車を今でも綺麗にして乗っている人に是非会って話をしてみたいと思っていたんだと言い、何処で見つけたの?とか、何故この車を買おうと思ったの?とかから始まり、錆はかなりあったのかとか、修理が大変だったろうとか、けっこう色々な質問をし、もし手放す時が来たら、ぜひ僕を思い出して連絡をして欲しいと、名刺を手渡してくれたと言うので、私達はその人が帰った後、「相当この車が欲しいんだろうね」と、"Car Enthusiast" の話で盛り上がってしまった。

エスコートは本当に人気がある。
特に50代から上の世代は、郷愁も相まって、'Lovely Car' と愛着を込めて呼ぶのだ。



ガソリンスタンドでも白人の中年男性に「いい車だね!」と声を掛けられ、家に居ても見ず知らずの中年男性(やはり白人)が持ち主に会いたいとやって来る…

同居人Hは会社でも中年男性ばかりが近寄って来るようで、オヤジキラーと皆にからかわれてかなりガックリきていたが、全く予期せぬ今夜の来客の話は、きっと明日、会社で笑い話となっているに違いない。


「変な経験だった〜」とHは言い、「ユニ(大学)に通ってるの?って聞かれてたから、実際よりも若く見えたんだね」と、Tが冷やかして笑っていた。

変だけど、何だか微笑ましく感じてしまったこの珍しい来客によって、荒んで来ていた心が少し和んだように思えた。


日本では、「あなたの車良い車だね」と言いに、見ず知らずの人の家を尋ねてなど行かないだろうし、「手放したくなったら連絡して」と、他人の愛車に購入希望者として名乗りを上げにも行かないだろう。

この国、オープンな(アッケラカンとした?)お国柄だよねと、同居人達とひとしきり笑った晩だった。



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