9.9.15

方丈記をふと思い出す

 ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。
 世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。 たましきの都のうちに、棟を並べ、甍を争へる、高き、卑しき人のすまひは、世々を経て尽きせぬものなれど、これをまことかと尋ぬれば、昔ありし家はまれなり。或は、去年焼けて今年作れり。或は、大家滅びて小家となる。
 住む人も、これに同じ。所も変はらず、人も多かれど、いにしへ見し人は、二三十人が中に、わづかに一人二人なり。朝に死し、夕に生まるるならひ、ただ水の泡にぞ似たりける。
 知らず、生まれ死ぬる人、いづかたより来たりて、いづかたへか去る。また知らず、仮の宿り、誰がためにか心を悩まし、何によりてか、目を喜ばしむる。その主とすみかと、無常を争ふさま、いはば朝顔の露に異ならず。或は、露落ちて花残れり。残るといへども、朝日に枯れぬ。或は、花しぼみて露なほ消えず。消えずといへども、夕べを待つことなし。


誰がためにか心を悩まし、何によりてか、目を喜ばしむる



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