30.10.15

"ハンディー ウーマン"

昨日、以前、私のスタジオで働いてくれていた女性から電話があった。
食料品の買い物に出掛けるけれども、一緒に行かないかという誘いだった。

電話を受けた時、外でペイント作業をしていた私は、急いで身支度を整え、まだ乾いていないペイントに触れないよう慎重に作品を移動させ、アトリエの鍵を閉めて出掛けた。

彼女は1年半前に連れ合いを亡くし、一人娘が日中学校に行っていて居ない間、一人で居るのが寂しくてたまらなくなるようで、一緒にランチを取っている間も、買い物をしている間も、ずっと喋り続けていた。

喋り続けること約5時間… 

彼女が最近 USAのオンラインショップから購入したという水着の話から、彼女の信仰する仏教の話、娘の話、借家の話、友達の話… 絶え間なく話し続ける彼女を見ていて、あぁ、この人は一人では居られない人なんだなと思った。

彼女の購入した水着は縫製がひどくお粗末で、脇の縫い目が  10cm 近く開いており、何でこんな風になっているんだろうと見てみると、その部分だけ縫い代がかがり縫いから完全に外れていた。


ミシンで縫っていてそれに気付かないわけがないと私は思うのだが、縫子はどこを見て仕事をしていたのだろうか… 
しかも、縫い上がった物が消費者の手元に届くまでには少なからず何人かの手を経て、何人かの目にも触れているだろうに、誰もそれに気付かなかったのだろうか…

失敗した部分をほどいて縫い直すのは手間がかかるから、気付いていてもそのままにしたとしか思えないような、そんな製品を見ていると、「全く、消費者をバカにしているよな…」としか思えなくなって来る。
それを買った人のことなど微塵も考えてはいない。

もちろん、クレームすれば新しい物と交換してくれるだろうが(当然そうしなければならないのだが)、彼女は送料を節約する為にアメリカに住んでいる友達に受け取りと転送を頼んでいたため、時間も手間もかかってしまい、また友達の手を煩わせた上に、二重に送料を負担しなければならないということもあって、クレームできずに泣き寝入り…

どんな粗悪な物でも、とにかく売ってしまって、クレームが来たら交換すればいいだけのことだというのが、大方の大量生産品の製造及び販売業者のポリシーだ。検品などする気は毛頭無い。

タグに印字されている言語を見れば、この企業の商品が様々な国で販売されていることがよくわかるが、製造された国内だけで売られているならまだしも、世界中の多くの国に『お粗末な Made in ×××××』をこのように知らしめることによって、元々は素晴らしい技術を持った国が『粗悪品製造大国』という汚名を着せられてしまっていることに対して、それに関わる人々が何ら対策を講じていないことにも驚くばかりである。



そんな水着の直しを頼まれ、更にはキッチンに簡単な棚が欲しいというので、ちょうどいい寸法の物を作ってあげるよと約束して別れた。

私は何でも屋だ。
でも、どんなことをするにしても、こんなみっともない仕事はしない。


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