今日は、不注意で何かにぶつけてヒビが入ってしまっていた薔薇のパネルの修復を行った。
幸運にもヒビが入ったのは外側のピース1枚だけだったので、何の気負いも無く、いつものようにラジオから流れてくる話を聴きながら取りかかった。
まずは破損しているガラスの周囲のハンダを溶かして、表裏ともでき得る限りハンダが薄く付いている状態にする。もちろんフラックス(私はペースト フラックスを使っている)を塗り、熱したハンダ ゴテを使用して、付いていたハンダがポトポトと落ちるように、パネルをほぼ垂直に持って作業をする。
もうこれ以上ハンダは落とせないという状態になったら、破損したガラスを取り除く工程に入るのだが、ここで気をつけなければならないのは、絶対に無理矢理剥がそうとしないこと。
無理矢理剥がそうとすると、取り除きたいガラスに隣接しているガラスに巻いた銅のテープまで剥がれてきてしまい、悲惨な結果になるためだ。もし他のピースに巻いた銅のテープが剥がれてしまったら、そのピースまでも取り除いて銅のテープを巻き直さないとならなくなるため、私は溶かしたハンダが固まらない内に(ハンダは一瞬で固まるので、ハンダゴテで熱しながら)紙を差し込み、徐々に隙間を広げて行くという地道な方法を取っている。
ヒビの入ったガラスがきれいに取れたら、破損していない隣接部分のハンダを可能な限り取り除いておく。
そして、破損したピースの周囲の銅のテープを丁寧に取り除き、ガラスに付いている接着剤をきれいに洗い流す。
破損したピースの型を紙に写し取る。
今回は破損したピースが小さかったため、端ガラスを色別に集めておいたコンテナの中を探すと、同じガラスでちょうど良いサイズがあった。大きな板ガラスを切らずに済んで幸いだった。
切り取ったパターンを、ガラスの方向を合わせて、普通の紙用糊でガラスに張り付ける。
ガラスをカットしたことのない人は、ガラス カッターでこのパターンの通りにスコアを入れ、一度でこのパターンを切り取ろうと考えることが多いのだが、ガラスはそう上手いこと切れてはくれない。
まず、1 の矢印の方向に切り、次に 2 は矢印の方向にパターンのカーブに添ってスコアを入れ、パターンを貼付けてない所も自然なカーブを描いてスコアを入れ割り取る。小さなガラスはプライヤー(ペンチ)を使って割り取ることが多いが、私はこの 2 のカットのようなものは手で簡単に割り取ってしまう。
3 と 4 をつなげて切り取ろうとすると他の部分が割れる可能性が極めて高くなるので、スコアは分けて入れなければならない。
まず 3 を切り離し、最後に 4 を切るようにすると失敗なくカットができる。
ガラス カッターでカットし終えたものは縁がシャープな上、若干パターン通りではないため、グラインダーでパターンの通りに削り取る必要がある。(写真を撮り忘れた)
その後、ガラスに付着している(ガラス カッターで切る際に使用する)オイルや、紙を貼付けた時に使用した糊を、中性洗剤を使ってきれいに洗い流し、水分をしっかり拭き取ってから、銅のテープを周囲に巻いて行く。ヘラを使って、テープが簡単に剥がれないようピッタリとガラス面に貼り付けなければならない。(これも写真を撮り忘れた)
私はハンダの線をこんもりさせて(丸く盛り上げて)きれいな線を出しているため、修復する部分のガラスをそのまま置いてハンダ付けしようとすると、他の部分と高さが違ってしまって違和感のある仕上がりになってしまう。
簡単な解決策は、紙を何度か折り重ねて下に敷き、高さを合わせるという方法で、きちんと高さを合わせてハンダで数カ所点付けすれば、もう折り重ねた紙を敷いておく必要は無い。
ハンダ付けは片面ずつ行い、修復するガラスに貼付けた銅のテープと隣り合わせるピースの隙間にもしっかりハンダが流れ込んで固定するよう、注意を払う必要がある。
薄くハンダ付けしただけの作品と同様、ピースとピースの間にしっかりハンダが流れ込んでいない作品は壊れ易いのだ。
そのようにして両面のハンダ付けを終えた後、縁にもこんもりとハンダを盛り、接続部分を綺麗に仕上げたら、中性洗剤を使ってフラックスを丁寧に洗い流し、水分を拭き取った後ブラック パティーナで染色する。
パティーナは毒物なので、染色後すぐに水洗いすることと書いてあるが、私は水洗いだけでは何だか触りたくないので、やはりさっと水洗いした後中性洗剤でしっかり洗ってしまう。
ちなみに、水洗いだけのものと洗剤で洗ったものとの差は、私には全くわからない。
修復の終わったこのパネルの木枠を作る作業が、次に待っている。
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