私達がここに引っ越して来た時、彼の人が嘗て仕事で使っていた製図道具とともに、数種類のトレーシングペーパーも持って来ていた。
アクリル板の(ボックスの内部になる方の)一面に、その日本製の質の良い厚手のトレーシングペーパーをマスキングテープで貼付け、明るさを見て、まぁこんなものかなと、取りあえずはその状態のまま使ってみることにした。
ガラスの色合いを見るのも、図案をトレースするのも全く問題無く、これまで家の窓ガラスに貼付けてトレースしていたことを考えれば、何十倍も作業が楽になったように感じた。
A4の紙に拡大コピーしたものをつなぎ合わせるのも簡単になった。
彼の人が使っていた道具を使う時、いつも思い出すのは、我家に隣接していた彼の人の仕事場の風景だ。
彼の人は測量設計士だった。
真面目で、欲深くなく、よく働き、家族思いのいい人だった。
そんなことを思いながら作業していたら、新しく作る物のデザイン画の上に、涙がポタポタと落ち、精密に書いた線がふやけて、台無しになってしまった。
何てことだ...
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